ポテンシャルに幅がある! BMW「iX M60」に見たBEVの頂点

2022.11.23 14:30
BMWは欧州プレミアムブランドの中で、いち早く車両の電動化に取り組み、2013年には電動ブランド「i」シリーズを立ち上げた。BMW「i3」や「i8」で得た経験とノウハウを注ぎ込んで開発したBEV(バッテリーに蓄えた電気だけで走るピュアな電気自動車)が、SUVの「iX」シリーズで、今回紹介するBMW「iX M60」は、現時点におけるシリーズ最高性能モデルだ。
「iX M60」の「M」とは、もともとBMWのモータースポーツ活動を担当したBMW M社を起源に持つ組織で、サーキットでの極限の戦いで得た技術力を注いだ特別なモデルを開発してきた。当然ながらiX M60は、それまでの最上級グレードだった「iX xDrive50」に比べて大幅にパワーアップしている。リアのモーターはiX xDrive50が313psだったのに対して、iX M60は489ps。システム全体で見ると、最高出力は523psから619ps、最大トルクは765Nmから1100Nmへと引き上げられた。
ただし日本の道路環境では、速さというよりも、加速力に厚みが増したという印象のほうが強いかもしれない。信号待ちからのゼロ発進で、全長約5m、車重2300kgというヘビー級のクルマが音もなく悠々と動き出す様子は、まるで象か恐竜にでも乗っているかのようでイメージで、いままでのエンジン車とは比べようがない。
「スポーツ」モードに入れて、ETCゲートを越えた瞬間にアクセルペダルを踏み込めば、宇宙戦艦ヤマトのワープ航法のような、前方に吸い込まれる加速感を味わうことができる。あっという間に制限速度に達するので“ワープする感覚”は一瞬だが、ここで分かるのは他社のスーパーBEVと異なり、加速感が非常に洗練されているということだ。
ライバルの中には、ムチ打ちになるんじゃないかと思うほど、インパクト重視で加速するスーパーBEVもあるが、BMWはそのようなインパクトよりも、人間の感性に寄り添うことを重視しているように感じられた。このあたりは、i8というBEVスポーツカーでの経験が生きた結果だろう。
もちろん、iX M60が遅いというわけではない。0-100km/h加速は3.8秒で駆け抜ける。参考値として挙げるなら、ポルシェ911カレラは4.2秒だから、その速さはお分かりいただけるだろう。さらに基本的に無音である電気自動車だが、スポーツモードでは、ドイツの高名な映画音楽家が手がけたというSFサウンドが流れる仕組みも面白い。アクセルペダルの踏み加減に応じて発せられる音からも「駆けぬける歓び」を体感できるのだ。
それでいて乗り心地も快適だ。「M」シリーズとあって、サスペンションはある程度の硬さを覚悟していたけれど、杞憂だった。当然ながら車体のパワーアップに合わせてエアサスペンションやダンパーのセッティングを変更しているけれど、不快な突き上げはほとんどなかった。スポーツモードでは、サスペンションやパワーステアリングにしっかり感はあるものの、イヤな硬さは感じない。ワインディングロードでは、むしろデフォルトの「パーソナル」モードよりもクルマ全体がぎゅっと引き締まった感じがすることと、余分な動きが減ることで、快適にドライブできるほどだった。
ここまで話すとついスポーツモードばかりを試したくなるけれど、最も穏やかな「エフィシェント」モードも悪くなかった。レスポンスが鈍くなることなく、出力は控えめになり、パワーの出方が穏やかになる。このモードでは前出のSFサウンドも消えるので車内は静か。後席は広々としているので、ショーファーカーとして使ってもいいだろう。
エンジンの搭載を想定していないBEV専用設計は、荷室の使い勝手といったユーティリティ性が高く、ゴルファーにとっては非常にありがたい。荷室容量は5名乗車時で500リットル、後席をたたむと1750リットルにまで広がる。マフラーなど、排気系パーツが不要なため、荷室の床下にサブトランクが備わることもBEVならではの機能だ。実用面を付け加えると、1充電あたりの航続距離はWLTC値で615km。急速充電器を用いると、充電0%から約80%まで、約75分で充電が可能だ。
ヨーロッパでは、モータースポーツは紳士のたしなみ、サーキットは紳士の社交場という側面がある。だから「M」は高性能車の開発とともに、ラグジュアリーモデルの開発にも力を入れてきた。iX M60は、スポーティとラグジュアリーの二つの方向に、iXのポテンシャルを広げていると感じた。
BMW iX M60  車両本体価格: 1740万円(税込)ボディサイズ | 全長 4955 X 全幅 1965 X 全高 1695 mmホイールベース | 3000 mm車両重量 | 2380 kgモーター最高出力 | 619 ps(455 kW)最大トルク | 1100 N・mバッテリー容量 | 111.5 kWh充電走行距離(WLTCモード)| 615 km0-100km/h | 3.8 秒最高速度 | 250 km / h
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Text : Takeshi Sato

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