【試乗】安心してください、ちゃんとワーゲンしてますから! VWのEV「ID.4」の新鮮だけど落ち着く走り

2022.11.22 17:00
この記事をまとめると
■フォルクスワーゲンのEV「IDシリーズ」の日本導入第一弾となるID.4に試乗した
■ID.4は思っている以上にスタイリッシュでロングホイールベースの恩恵を受けて居住スペースが広い
■EVらしい尖った感じは皆無で、とにかくフォルクスワーゲンらしい走りだった
すでに50万台を販売したフォルクスワーゲンのEV「IDシリーズ」
  フォルクスワーゲンのピュアEVシリーズ「ID」がだいぶ好調らしい。2020年の秋に最初のIDが顧客へ納車となってから、わずか2年という短い期間に50万台が販売されたのだ。そのうえ13万5000台ほどのバックオーダーを抱えてるという。これってすごいことじゃないか?
  それはもちろんワールドワイドでのお話。IDシリーズは現在、コンパクトなハッチバックのID.3、SUVのID.4、クーペSUVのID.5、中国向け7シーターSUVのID.6、ワンボックスのID.Buzzといったモデルたちがラインアップされていて、数字はその総合力だ。そしてその中心となっているのが、ID.4である。以前から日本導入に期待がかかっていたが、ついに正式発表となり、試乗する機会に恵まれた。
  初めて対面したID.4は、写真で見るより表情が豊かで、思っていたよりスタイリッシュな印象だった。とくに横から見たときのショルダーラインの流れ方、ウエストラインより下側のえぐり方、Aピラーからルーフを経由してCピラーへとつながるシルバーのアクセントなどによって、正統派SUVのシルエットに躍動感を持たせてるあたりは巧みだ。
  昨今のフォルクスワーゲンは、イタフラ系のような華やかさや鮮やかさこそないものの、見る者の気持ちにストンと刺さるデザインを纏ってることが多いように感じてるのだが、このID.4も間違いなくその1台。スタイリングは見る人それぞれの感覚で判断すべきものだと考えてるから普段はあまり語らないのだけど、ID.4、個人的にはなかなか好印象だ。フォルクスワーゲンのなかでは、アルテオン・シューティングブレイクと並ぶくらいカッコいいと思う。
  フォルクスワーゲンのEV用モジュラープラットフォーム、“MEB”の上に構築された車体のサイズは、全長4585mm、全幅1850mm、全高1640mm。ざっくりトヨタのRAV4とほぼ同じくらい、フォルクスワーゲンの中でいうならT-Rocよりほんの少し大きい程度、といったサイズ感だ。
  が、そうした内燃機関を積むSUVたちと大きく異なるのは、ホイールベースの長さ。2770mmという数値は、そのまま室内の居住スペースの広さにつながっている。とくにリヤシートまわりは大きな恩恵を受けていて、脚を組むこともできるほど。室内全体が車体のサイズからしても広々として運転席まわりにもゆとりがあるように思えるのには、フォルクスワーゲンの空間作りの上手さも活かされてるからだろう。
  たとえばシンプルで余計な造形のないクリーンなダッシュボードもそのひとつ。物理的なスイッチ類が少なく、さまざまな操作を中央のタッチスクリーンで行わねばならないのにはちょっとばかり慣れが必要かもしれないが、視界がスッキリしてるのは気分いいな、と思う。匂い立つような色気はどこにもないけれど、クオリティの高さとほどよく洗練された印象が感じられるあたりは、やっぱりフォルクスワーゲン、である。
  日本に導入されるID.4は、基本2タイプ。バッテリー容量が77kWhで最大561kmの航続距離を持つモデルと、52kWhで388kmのモデルだ。77kWhのモデルには204馬力と310Nmのモーターが組み合わせられ、52kWhのモデルは170馬力と310Nmとなる。今回の試乗車はバッテリー容量の大きい方、ID.4“Pro”ローンチエディションだった。
鋭い加速感を抑えたEVらしくない違和感ゼロのドライブフィール
  リモコンキーでドアのロックを外してシートに腰を下ろすと、システムが起動していて走り出せる準備が整っていた。わざわざスタートスイッチを押すまでもない、というわけだ。これは軽く驚かされた。降りるときも同様で、シフトセレクターでパーキングを選び、シートから抜け出して、キーをロックすればシステムが自動的にオフになる。たったひと手間を省けるだけだから楽だとか何だとかそういうことでもないのだけど、何だかそれがヤケに新鮮に感じられた。内燃機関のクルマだと、こうはいかない。
  で、走らせてみた印象なのだけど、これがもうおもしろいくらいにフォルクスワーゲンだった。何ひとつ尖ってたり出しゃばってたりするところがなく、といって何か不足を感じるコトやモノがあるわけでもなく、ずっと穏やかな気持ちでいられ、その間中「ああ、いいクルマだなぁ」とニンマリしながら満足感や充足感のようなものを感じていられるクルマ、なのだ。まるでゴルフやポロを走らせてるかのような、そんな感覚でいられたのだ。
  いや、誤解なきようにお伝えしておくけれど、EVならではのメリットはしっかり感じられる。室内はいかなるときも静けさに満ちているし、常に腰の据わった安心感のようなものを感じていられるし、見た目からは想像つかないくらいによく曲がる。
  もちろんアクセルペダルを踏んだ瞬間から間髪入れずに力強い加速を味わわせてくれる。が、アクセルペダルをベタッと踏み込んでも、おっ、来たぞ! みたいに驚くほどの鋭い加速感はない。
  何せ0-100km/h加速は8.5秒。引き合いに出すなら、バッテリー容量42kWhで118馬力と220Nmのフィアット500eより、たった0.5秒速いだけなのだ。回生ブレーキによる減速力も極めてマイルドで、D(ドライブ)モードからB(ブレーキ)モードに切り換えてもグッと来るような減速感はない。
  つまり、やればできるけどあえてやらない、ということなのだろう。EVとしての“らしさ”を強調して“どうだ? すげーだろ?”とやるのではなく、それらをしっかりと活かしつつ誰もが違和感を覚えずにドライブできるクルマに仕立てた、ということなのだ。乗り心地までこれまでのフォルクスワーゲンによく似たライドフィールで、なかなか良好なのだ。そんなところもまた、フォルクスワーゲンらしい優しさ、である。
  充電は200Vの普通充電とCHAdeMo規格の急速充電。今回の77kWhのバッテリーを積む“Pro”モデルでは、90Kwの急速充電器を使えばバッテリー警告灯が点いてから80%まで約40分、6kWの普通充電では残量ゼロから満充電まで約13時間。
  よくできたEVだとか走らせて楽しさの濃いEVに乗るたびに思うのは、日本の充電インフラがもっと飛躍的によくなればいいのにな、ということ。今回もしみじみそう思わされた。

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