ポルシェ911なのにRRを捨てた! 打倒マクラーレンで誕生した「911GT1」という最強の異端児

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2022.11.18 17:30
この記事をまとめると
■ポルシェ911といえばRRがお決まりだが、じつはミッドシップの911も存在した
■ル・マンGT1カテゴリーに参戦するために開発されたレーシングカーの911GT1がそれだ
■911GT1はホモロゲ取得のためにデチューンされたストリートバージョンも市販された
敵がミッドシップならこっちもミッドシップにすればいい!
  ポルシェ911といえば、エンジンを後輪軸上に配置して、後輪を駆動するRR方式をかたくなに守り続けてきたクルマ。ですが、歴代911のなかで1タイプのみ、ミッドシップレイアウトを選んだモデルがありました。今回ご紹介するのは、ル・マンGT1カテゴリーに参戦するためのホモロゲーションモデルとして誕生した911GT1。車名にこそ911とついていますが、その実態は似ても似つかないスポーツカー(というかレーシングカー)です。
  そもそもは1995年、ル・マン24時間耐久レースの主催者(フランス西部自動車連盟)がレギュレーションを「本来の」GTカーへとシフトしたことが端緒でしょう。この年の覇者はマクラーレンF1という希代のGTマシンで、ポルシェが送り込んだ993GT2はまったくと言っていいほど歯が立ちませんでした。そこで、バイザッハの首脳陣はある人物をレーシングカー部門に復帰させることに。1970~80年代のル・マンにおけるポルシェ黄金時代を築いた数々の博士のうち、レーシングフィールドを退き生産者管理部門で余生を過ごしていたノルベルト・ジンガーはその抜擢を「嬉しい驚きだった」と語っています。
  ベテラン中のベテランたるジンガーは、すぐさまポルシェのおかれた現状、レギュレーション、そしてライバルたちの動向を調べると、わりと簡単にソリューションを打ちだしたようです。「敵がミッドシップの怪物なら我々もミッドシップにすればよい」と。
  ここで思い出していただきたいのが1994年ル・マン24時間レースの覇者。グループCカー最後の年であり、レギュレーションがフワフワしていたのをいいことに、ポルシェがグループCカーをロードカーに作り替えた「ダウアー962LM」でGTクラスにエントリー、まんまと優勝をかっさらっていったのです。レギュレーションの隙をつくのが上手なポルシェとはいえ、これにはほかのエントラントたちも歯ぎしりが抑えられなかったはず。
  翌1995年シーズン、ポルシェにはWSC95(TWR製シャシーにポルシェのエンジンをミッドに積んだWSCカテゴリーのマシン)というレーシングカーがあることはありましたが、1994年のレースで批判を浴びたことを反省したのか、これをGTカーに作り替えるような無茶はせず、参戦見送りということに。そして、1996シーズンを待つことにしたのですが、レギュレーションで「25台以上の市販車製造」が義務付けられていたため、ジンガーがどう出てくるのかと社内だけでなく、ライバルたちは虎視眈々だったはず。
ホモロゲーション取得のために公道バージョンも市販された
  結局、ジンガー博士はほぼほぼゼロからミッドシップGTレーサーを作り上げることに。それでも、当時のポルシェ993(カブリオレ)のフロントスクリーンやキャビンを切って貼ったりしたことで市販車としての衝突安全基準をクリア、開発期間の圧倒的な短縮を実現して見せたのでした。もっとも、生粋のレーシングカーと違い、ガソリンタンクは重心位置から遠く離れたフロントのスペースに配置されるなど、ポルシェらしくないといえばらしくないパッケージではありました。
  とはいえ、ミッドに搭載された3.2リッター水冷フラットシックスはツインターボの過給によって640馬力(リストリクター装着時)以上のハイパワー、リヤにはプッシュロッドサスペンションを新設するなど、戦闘力としては十分以上の仕上がり。
  このル・マンで走るレーシングカーを無理やりロードモデルにしたのが911GT1 Strassen Version、いわゆるストリート仕様というクルマ。さすが生産車部門にいたジンガーらしく、じつにそつない仕上げが特徴です。フロントセクションやキャビンの一部を市販993から流用しているだけあって、居住性やらガソリンスタンドでの使い勝手(要は市販車と同じところにタンクがあり、普通に給油が可能)など、識者のコメントによれば「962のロードリーガルとは比べ物にならない」ほど快適だそうです。
  もちろん、エミッションコントロールによって、600馬力以下(550馬力程度?)にデチューンされ、排気系もいくらか静かなマフラーに変えられたりしていますが、それでも0-100km/h加速3.7秒、最高速度308km/hと公称されています。これには、乾燥重量1100kgという超軽量も大きく寄与しているはずで、カーボンなんかそれほど使っていないわりにこの数値はさすがジンガーと驚きを禁じえません。
  なお、25台の生産義務は1996年中に達成しなければならないわけではありませんでした。実際、911GT1のストリート仕様は1997年から1998年にかけて納車されたクルマが多く、当初のプロトタイプが993タイプのフロントマスクだったのに対し、996タイプのヘッドライトが装着されるなど、いくつかの変更が施されました。それゆえ、マニアの世界ではプロトの993タイプが珍重されており、お値段は20億円とも噂されています。
  ちなみに、ストリート仕様でなく、純然たるレーシング911GT1をストリートリーガルに仕立て直したオーナーもいて、こちらは「70km/hも出せば車内で会話はできなくなる」というレーサーらしい1台となっているようです。
  ところで、本来のレーシングカーの成績ですが、1996年のルマンでは総合2位と3位、続く1997年は全車リタイヤ。ここでジンガーが本性を現し、1998モデルはそれまでとはまったく別のマシンへと生まれ変わると、宿敵マクラーレンF1GTRをようやくやっつけて総合優勝の座に。しかしながら、この1998モデルをベースとしたストリート仕様は作られていません。プライベーター(ザクスピード)に売られた個体があったので、それを無理筋でナンバー付けるというのも楽しそうではありますがね。

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