この記事をまとめると
■ハイブリッド専用車としてデビューしたトヨタ・アクア
■2021年に登場した2代目モデルを徹底解説
■各グレードの詳細やヤリスとの比較も
ハイブリッド専用コンパクトカー「アクア」
プリウスに次ぐハイブリッド専用車として2011年にデビューした初代アクア。その後を受け継いだ2代目アクアは2021年に登場しました。
現行モデルとなる2代目は初代デビュー時とは違い、ハイブリッドユニットを搭載したコンパクトカーが多数、販売されているなかでの登場となりました。トヨタ内にもサイズやコンセプトが近いヤリスにハイブリッド仕様が用意されており、一時期アクアは一代で消滅するのではないか、なんて噂まで出たほどです。
当然、ライバルとなるモデルも多くなりましたが、2代目アクアの大きな特徴は国内専売モデルとして登場したこと。
グローバルモデルとして登場するのがあたりまえの現在、国内での交通インフラや使用環境を考慮した日本専売の新たなハイブリッド専用コンパクトカーとして初代から大きく進化したのです。
国内専売だからこそのポイントが外部給電システムを全グレードに標準装備したこと。毎年、各地で災害が起こる日本において災害時に役立つ外部給電システムを備えたことは社会的に大きな意義を持つでしょう。
とはいえ、気になるのがプラットフォームやパワーユニットを共有するヤリスとアクアはどう違うのか。同じメーカーが販売するコンパクトハイブリッド車である両車の違いを見ていきましょう。
ハイブリッド仕様も用意するヤリスとの違い
初代アクアはプリウスより下のハイブリッド専用車、つまりトヨタのハイブリッドエントリーカーの役割を担うコンパクトカーでした。
ただ、2代目登場前にヤリスHVがその役割を受け持つようになっていたため、ヤリスよりひとつ上、ホンダ・フィットや日産ノートのハイブリッド仕様と対抗するコンパクトカーへと生まれ変わりました。
プラットフォームやパワーユニットはヤリスと共有する2代目アクアですが、ボディサイズはひとまわり大きくなっています。全長は110mm大きくなり、その分、リヤシートにゆとりを備え、ファミリーカーとしての資質を備えました。ボディサイズの違いがアクアとヤリスの大きな違いといえます。
またアクアのパワーユニットはハイブリッドのみであるのに対して、ヤリスは1リッター、1.5リッターガソリンエンジン搭載車も用意。トヨタのラインアップでハイブリッド車だけでなくガソリン車のエントリーモデルも担っているのです。
アクアとヤリスHVはハイブリッドユニットこそ同じですが、搭載する駆動用バッテリーは別物です。バッテリーの違いについては後ほど詳しく説明します。
続いて2代目アクアの特徴を詳しくお伝えしていきましょう。
パワーユニット
2代目アクアに搭載されるパワーユニットはヤリスHVと同じハイブリッドユニット。
M15A-FXE型1.5リッター直3エンジンと2つのモーターを組み合わせたTHSⅡが用意されています。
ポート式燃料噴射装置を備えた1.5リッターエンジンは最大熱効率40%以上を誇る高効率ユニット。初代が搭載していた1NZ-FXE型1.5リッター直4エンジンの最高出力が74馬力だったことに対して、91馬力へ向上しました。
走行用モーターも減速機構を改良し、ユニット自体をコンパクト化。潤滑油の方式も変更するなどさまざまな改良が施されています。
また初代には用意されなかった4WDが設定されたことも2代目のトピックスといえるでしょう。4WDシステムもヤリスHVと同じ、独立式モーターで後輪を駆動するE-Fourシステムを採用。電動モーターとディファレンシャルギヤを一体化し、伝導効率に優れていることが特徴です。
ハイブリッドユニットや4WDシステムをヤリスHVと共有する2代目アクアですが、駆動用バッテリーは別物。アクアに搭載されるのは“バイポーラ型”と呼ばれるニッケル水素バッテリーで、量産車としては世界で初搭載となりました。
構造を詳しく説明するとかなり長くなるため要約すると、従来のバッテリーは電解液を封印するためケースが必要だったものを、集電体を隔壁に使うことで個別のケースを廃止。集電体の面積を接続端子として機能させることで高出力化を実現したとともに、コンパクト化も実現したことがバイポーラ型の特徴です。
結果、バッテリーが高出力化されたことで、モーターの加速フィールや加速応答が向上。新たに備わったドライブモードの「POWER」(※エントリーグレード「B」には未設定)を選択することで加減速の応答性が高まるなど、初代では体感できなかったスポーツ走行を楽しむことができるようになりました。
プラットフォーム
パワーユニット同様、シャシーも主な部分はヤリスと共用。TNGAコンセプトを備えたGA-Bプラットフォームを採用した2代目アクアは、軽量かつ強固な構造を実現しました。
フロントサスペンションはマクファーソンストラット式、リヤサスペンションは駆動方式の違いで異なりFFがトーションビーム式、4WD仕様は2リンクダブルウイッシュボーン式となります。
プラットフォームを共有するヤリスと異なるのが静粛性。静かさを売りとするハイブリッド専用車だけに吸遮音材を効果的に設定し、静粛性を高めています。
静粛性とともにヤリスより上級な位置づけとするため、乗り心地も追求。上質な乗り心地を可能とすべくサスペンションチューニングが施されました。
また燃費性能の向上に繋がる空力対策にも力が入れられています。
2代目アクアは初代と比べ車高が高くなっているため空気抵抗が増大するかと思いきや、前後バンパーの形状やアンダーフロアのエンジンルーム下などにカバーを追加。
ルーフスポイラーで空気の流れを調整するなどしたことで優れた空力を実現し、静粛性にも貢献しました。
エクステリア&インテリアデザイン
2代目アクアのエクステリアデザインは初代のイメージを受け継ぎつつ、スタイリッシュさをより強調しています。
モノフォルムは踏襲しつつ精悍なフロントマスクから左右に張り出したリヤフェンダーまで伸びやかに繋がるデザインは、ひと言でいうと「かっこいい!」造形。
リヤまわりもフロントに負けず縦長のランプやリヤハッチやガラスの造形など、スタイリッシュにまとめられています。
インテリアは先代が採用していたセンターメーターを廃止。メーターは運転席前方へ配置し、従来メーターが装備されていた部分には10.5インチ、もしくは7ディスプレイオーディオが備わりました。ただ、10.5インチディスプレイを装備しても運転中、視界に入らないようデザインされています。
ヤリスより上級に位置づけられるアクアだけに質感にもこだわり、上級グレードにはインパネにスモーキーブロンズ加飾を施すなど高級感を演出。
またコンパクトカーでありながら、インパネなどはワイド感を強調する造形でまとめられました。
ユーティリティ・装備など
2代目アクアのボディサイズですが、全高こそ高くなりましたが全長、全幅は初代から変わっていません。
ただしホイールベースを50mm延長したことで、前後シート間スペースの拡大などに寄与しています。
運転席からの視界は良好。これはAピラーを初代より細くしたことが大きく貢献しています。先程もお伝えしましたが、初代よりホイールベースを50mm延長したことで、リヤシートはかなり広くなりました。ただし、ホンダ・フィットや日産ノートほどの広々感はありません。
またホイールベースの拡大で、リヤシートとともに恩恵をうけたのがラゲッジルーム。
先代から大きく容量が拡大……というほど大きくはなっていないですが、先代ユーザーなら広くなったことがわかるほどの違いはあります。
2代目アクアの装備で注目したいのが、全グレードに外部給電が可能なアクセサリーコンセントを装備していること。AC100V 1500Wのコンセントをセンターコンソール後部に装備し、走行中はもちろん停止時にでも1500W以内の家電が利用可能です。
同じく2代目で注目したい機能が、自動で駐車を行うアドバンスパーク。
クルマを停めスイッチを操作するだけで、ハンドルの切り返しやアクセル・ブレーキ、シフト操作まで自動で対応。駐車に自信がないユーザーにとってはありがたい先進機能といえるでしょう。
アクアのグレード一覧
2代目アクアのグレードはエントリーモデルのBからZまで4グレードをラインアップ。
もっともリーズナブルに購入できるBですが、先進安全装備「トヨタセーフティセンス」をはじめ、LEDヘッドランプ、デジタルメーター、マルチインフォエーションディスプレイなど最低限欲しい装備が備わっています。
ただし、足元を引き締めるアルミホイールはオプションでも装着不可。質感もけして高くはないため、Xより上のグレードを購入するユーザーが大半だと思われます。
そのXですが、Bからカラードサイドドアハンドル、ウォッシャー連動間欠リヤワイパー、ドライブモードスイッチ、スマートエントリーが追加。Bにはオプションで装着できなかったアルミホイールやブラインドスポットモニターなども装備可能です。
さらにGにはXの装備に加え、UVカット機能付きウインドシールドグリーンガラス、バックガイドモニター、3本ステアリングホイールなどを装備。
最上級グレードZにはピアノブラック塗装が施されたグリルガーニッシュ、LEDフロントフォグ、ウォッシャー連動間欠フロントワイパーなどが装備されるほか、Gとともにシート表皮など多彩なオプションを選択できることが特徴となります。
初代アクアとは
2011年に登場し、2021年まで約10年間販売された初代アクア。
プリウスを前後に圧縮したようなモノフォルムデザインを採用し、プリウスよりもリーズナブルに購入できるハイブリッド専用車ということで人気はすぐに爆発。2013年から2015年までプリウスをおさえ国内登録車販売ランキング1位を記録したほどです。
デビュー後、2015年には先進支援安全装備「トヨタ・セーフティ・センスC」を搭載。その後も安全装備のアップデートが続けられるなど機能面には年々、改良が加えられていきました。
その結果、初代は販売約10年間で187万台以上を売り上げる大ヒットモデルとなったのです。
まとめ
2代目となったアクアの2022年9月における販売台数は6732台。これは国内登録車新車販売台数ランキングで10位となり、トヨタが想定していた月間目標販売台数9800台には届きません。
半導体不足などによる影響が大きいとはいえ、年間販売台数トップを記録していた初代と比べるとやや寂しい販売台数。
ハイブリッドシステムを搭載したコンパクトカーが増えたことが大きな要因でしょうが、アクアに大きな特徴がないことも事実。ハイブリッドシステムを搭載するコンパクトカーというだけではユーザーが興味を持ってくれないなか、今後、アクアがどのように進化していくかに注目です。