この記事をまとめると
■日本は世界的に見ても「ハイブリッド大国」となっている大型市場だ
■登場当初は目立っていたが、現在ではハイブリッドは当たり前となりつつある
■ハイブリッドカーでありながら「ハイブリッドを感じさせない」クルマを紹介する
ハイブリッド”らしくない”モデルを探せ!
世界的にも「ハイブリッド大国」と言われる日本において、もはやハイブリッドであることだけでは個性的とも魅力的ともアピールしにくい時代になりました。なめらかな加速やモーターアシストによる力強さ、EV走行による静かさなど、多くの人はハイブリッド車ならではの走りを好意的に受け取っていますが、なかには電動化によってどうしても生じてしまう違和感、自分ではない誰かに操られている制御感などに、抵抗を感じる人もいるのではないでしょうか。でも、良くも悪くもハイブリッドらしいクルマとは、一線を画す乗り味を実現しているハイブリッド車もあります。今回はそんな、ハイブリッドを感じさせないハイブリッド車たちをご紹介したいと思います。
まず1台目は、劇的な変貌を遂げて新型として登場したクラウンクロスオーバー。デザインはその名のとおりクロスオーバータイプになり、ハイブリッドシステムはこれまでのTHSを搭載したモデルだけでなく、新開発の「デュアルブーストハイブリッド」を搭載したモデルも登場しています。
それは2.4リッターターボエンジンに、まったく新しいシステムを組み合わせたパラレルハイブリッドとなっていて、2枚のクラッチの組み合わせによっていろんな走行モードを実現していることがひとつの特徴。トランスミッションには有段ATを採用しており、ダイレクト感のある走りがとても爽快です。加速していくと、エンジンサウンドも積極的に気持ちよく響いてくるのも、これまでのハイブリッド、とりわけ上質感や静かさをウリとしてきたクラウンハイブリッドとは、まったく開発思想が異なる仕上がりを感じます。
トヨタが新世代のクラウンとして、走りの楽しさを十分に感じさせるグランツーリズモを作り上げた、とも言えるハイブリッド車ではないでしょうか。
2台目は、惜しまれながら生産終了が決まった、日産のフラッグシップでもあったフーガのハイブリッドモデル。3.6リッターのV6エンジン+モーターというハイブリッドシステムは、それまで日産が多くのファンを掴んできた気持ちのいいV6エンジンに、さらにブースト的にモーターアシストを加えるという見方もでき、贅沢なハイブリッドだと歓迎されたものでした。
走りはじめから「聴かせる」という表現がぴったりのV6サウンドがキャビンを包み込み、なめらかな加速とリニアな操作感で、日産らしいスポーティな走りも得意なドライバーズサルーン。そんなフーガはハイブリッド嫌いの人も一度は乗ってみてほしいハイブリッド車です。
ハイブリッド+SUVの組み合わせもオススメ!
3台目は、言われなければハイブリッド車だと気がつかない人も多いという、スバルXV。低全高でもしっかりとオフロード性能を確保している、希少なキャラクターのクロスオーバーSUVです。スバルならではの水平対向エンジンにモーターを組み合わせた「eボクサー」というシステムで、全車が4WD。
走り出すとやや骨太なエンジン音や振動が感じられ、タフなデザインと相まって軽やかかつ元気な走りが印象に残りがちなのですが、じつはよくよくメーター内の表示を見ていると、モーター走行にも頻繁に切り替わっていることがわかります。
いい意味で、電動化車両にありがちなきめ細かい制御が運転操作を邪魔しすぎない感覚。自然体で乗れるハイブリッド車だと思います。
4台目は、2006年に世界初のFRハイブリッド車として登場した、レクサス GS450h。まだ日本でのレクサスブランドがスタートしたばかりだった当時、このモデルがレクサス成功のカギを握っていたといってもいいくらい、重要なモデルでした。
システムとしては、当時のプリウスが採用していたものと仕組みは近いものの、最高出力296馬力/最大トルク368NmのV6エンジンと、200馬力/275Nmという高出力化したモーターを組み合わせて、とてつもないパワーを実現。スタート直後こそモーター走行で静かですが、ひとたびエンジンが始動すれば鋭い怒涛の加速力とともに、どこまでも伸びていくようななめらかさに感服することでしょう。どっしりとした安定感、上質な乗り心地と相まって、日本を代表するラグジュアリーセダンの魅力が堪能できるはずです。
5台目は、マイルドハイブリッドが主流の輸入車において、唯一フルハイブリッドとなるE-TECH HYBRIDで日本導入を果たした、ルノー・アルカナ。最大の特徴は、ルノーがF1をはじめとするモータースポーツ活動で培った技術をフィードバックして開発した、ドッグクラッチマルチモードATを採用した独創的なシステムです。
これは一般的に用いられるクラッチやシンクロナイザーを省き、ダイレクトに減速ギヤとギヤセレクターの歯を噛み合わせることができるようになっていて、どうしてもショックが大きくなるところをモーターでなめらかにしており、駆動力の直結も可能。モーター側にふたつ、エンジン側に4つのギヤを持ち、全12通りの変速比で効率よく切れ目のない動力を引き出すことができるというものです。その説明のとおりに、アクセルペダルを踏み始めた瞬間からスルスルスルと極上の軽やかさでスタートしつつ、しっかりとした剛性感とダイレクトな操作感も感じられるという、とても新鮮な乗り味。
高速道路でも、クルージング中のわずかな加速・減速のコントロールにも遅れなく、意図したとおりの反応が得られるところが気持ちのいい1台です。ハイブリッドが苦手な人にこそ、乗ってみてほしいと思います。
ということで、ハイブリッド大国の日本では豊富なラインアップのなかから好みのハイブリッド車を選ぶことができます。以前に乗って苦手意識を持ってしまった人も、こうしたハイブリッドを感じさせないハイブリッド車なら、イメージが変わるかもしれませんね。