この記事をまとめると
■販売が絶好調だという新型ダイハツ・ムーヴキャンバスの人気の秘密を考察
■ストライプスとセオリーというグレードの用意に加え軽自動車らしからぬ快適装備が自慢
■これまで同様のキマエンジンに加え、新たにターボエンジンが追加されたのも販売に貢献
痒いところに手が届いたユーザー待望の装備の追加
2代目となったダイハツの新型ムーヴキャンバスの売れ行きが絶好調らしい。何しろ、2022年7月5日に発表後、約1カ月で月販目標台数6500台の約4倍となる約2万6000台の受注台数となっているのだ。ダイハツの軽自動車といえば、タント、ムーヴを筆頭に人気車種が数多いが、タントとムーヴの中間的車高のボディに両側スライドドアを備え、VWバス タイプ2 T1をイメージさせるエクステリアデザインを纏った、ある意味、ニッチで女性向けの車種でありながら、これほどの人気を得ていることに、改めて驚かされる。2016年に登場した初代にしても、約6年で累計約38万台もの販売台数を誇るのだ。
さて、新型ムーヴキャンバスだが、先代と違う部分は多い。VWバス タイプ2 T1をイメージさせるエクステリアデザイン、パッケージに大きな変更はないものの、プラットフォームはタントにも採用される最新のDNGA(トヨタでいうところのTNGA)を用い、先代ユーザーから「高速道路を走ったり、山道の登坂走行ではNAエンジンだと役者不足」ということで要望されたターボモデルを追加。
さらに、先代では「ストライプス」というVWバスっぽいキュートなエクステリアになるストライプスとモノトーンボディを揃え、ストライプスが上位グレードだったのだが、新型ではストライプスとともに用意される、シックで高級感ある大人っぽいモノトーンボディを「セオリー」グレードとし、上位グレードに位置づけたのである。ただし、価格は装備の充実を考慮すれば、先代から据え置きとのことで、両モデルは同装備グレードなら同価格としている(ストライプスは塗装にコストがかかるゆえ)。
この時代、軽自動車のユーザーでも安全性、つまり先進運転支援機能にこだわったクルマ選びをする人が少なくないが、新型ムーヴキャンバスはダイハツがいち早く採用した先進運転支援機能=スマアシを最大17項目用意。しかも、軽自動車にして贅沢にも電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能まで完備しているのだから驚きだ(いずれもG、Gターボのみ。Xは足踏み式ブレーキでオートブレーキホールド機能なし)。
ターボモデルの追加で、一家に一台のファーストカーとして使えるようになった新型だから、高速走行の機会も増えるに違いない。そこで威力を発揮してくれるのが、Gターボに標準、Gにスマートクルーズパックのオプションとして用意されるACC(アダプティブクルーズコントロール)だ。それは高度な全車速追従型(0~125km/hで設定可)で、つまり渋滞追従機能を備え、約2秒まで停止保持を行う(その後は電子パーキングブレーキに移行)。その時間内なら自動で再発進可能となるわけだ。
さらに軽自動車初といえるBSM=ブラインドスポットモニターまで10月から導入されるというのだから、軽自動車として最先端の先進運転支援機能を持っていることになる。つながるサポートの「ダイハツコネクト」とともに、軽自動車最上級の安心・安全をもたらしてくれる1台となりうるのである。
装備的にも一歩先を行っている。パワースライドドアの予約機能は目新しいものではないが、女性にうれしい360度スーパーUV、IRカットガラス、飲み物を暖かいまま維持できる「ホッとカップホルダー」、寒がりの女性にもうってつけの前席シートヒーター、新しい生活様式のなかで活用できる、テイクアウトしたものを車内でいただきやすいインパネがテーブルになる広々インパネ、そこにあるマスク置き場(!?)……など、徹底した使いやすさを追求しているのも、この新型ムーヴキャンバスなのである。
加速性能も静粛性もひとつクラス上をいくターボモデル
そんな新型ムーヴキャンバスは走っても絶大なる進化を見ることができる。まず、NAエンジンモデルの走りだが、すっきりとした前方、斜め前方視界が得られるとともに、52馬力、6.1kg-mのNAエンジンはじつに静かでスムースに加速を開始する。日常域、平坦路なら加速性能に不満はなく、速度を増していっても爽快にスイスイと走ることができるのだ。パワーステアリングは低速域ではじつに軽々したタッチ、操作性を示し、扱いやすさはメインターゲットであるはずの女性にピッタリである。もっとも、約30km/hも出れば、パワーステアリングは適度な重さ、しっかりとした手応えを示すようになるから安心だ。
もっとも、上り坂ではスライドドアを備えたボディの重さ×NAエンジンゆえの力不足を感じるシーンもある。が、エンジンを4000回転までまわしても耳障りなノイズが抑えられているのが幸いで、急な坂道や山道の登坂路でない限り、動力性能に関するストレスは感じにくいと思える。そして、車内の静粛性に関しても優秀で、全域で直接的ライバルのスズキ・ワゴンRスマイル(現時点でNAエンジンのみ)より静かなのである。
乗り心地はさすがDNGA。しっかりとしたボディの剛性感に支えられた、先代より硬めのタッチを示すものの、交差点やカーブでも車体の姿勢変化、ロール(傾き)は体感的に最小限。路面に左右されない快適な乗り心地が身の上だ。そうした乗り心地の上質感を高めてくれるのが、前席のかけ心地。シートバックの絶妙なフィット感、サポート性が功を奏していると思える。
一方、ストライプス、セオリーともに用意されるGターボモデルともなれば、その走りには文句の付けようがない。走り出しから一段とトルキーかつスムースなのは当然として、市街地、郊外路を含め、エンジンはNAモデルより低回転で済むため、車内の静かさでもNAモデルを上まわる。NAモデルで加速性能に不足を感じる登坂路でも、余裕しゃくしゃくである。
CVTのラバーバンド感(エンジン回転だけが先行する感覚)のなさ、ターボ特有のノイズのなさもあって、1.2リッター級の動力性能をじつにスムースに、自然に発揮してくれるのだから素晴らしい。
乗り心地に関しては、足まわり、タイヤサイズなど、NAモデルと同一のはずのターボモデルだが、乗り心地に関しては、ずばりターボモデルのほうが好ましく感じられた。具体的には、NAモデルで感じられた乗り心地の硬さが和らぎ、よりしっとりしなやかでフラットな乗り心地、上質なフットワークテイストを味わせてくれるのだ。理由はおそらくターボモデルのほうが20kg重く、タイヤの銘柄が異なるからだと”勝手に”推測する。
というように、相変わらずのストライプスのオシャレぶり、セオリーの上質感、そして使い勝手、装備、先進運転支援機能の充実度、運転のしやすさ、走りの良さ……といったあらゆる項目で進化し、軽自動車をリードする実力さえ備えているのだから、商品力の高さもまた文句なしといえるのだ。
エクステリアを見ただけで興味津々、運転席に座っただけで大満足(とくにストライプス)、装備など詳しい話を知って納得・安心、走って感動……そんな新型ムーヴキャンバスだから、間違いなく先代以上の成功が約束された1台となるに違いない。お薦めは依然としてキャラの立つ、映えるストライプスですけどね……。セオリーはモノトーンとともに、大人っぽいルーフのみ塗り分けのツートーンがあるといいかも(開発陣に進言済み)。