【試乗】5代目「砂漠のロールスロイス」の走りやいかに? 新型レンジローバーの激速ガソリンモデルに乗った

2022.09.19 17:00
この記事をまとめると
■5代目となるレンジローバーが登場
■PHEVやマイルドハイブリッドなどをラインアップすることが決定している
■3年分の受注が一部グレードで埋まっており、買えるモデルが現状では限られている
5代目となる最新の「砂漠のロールスロイス」に乗ってみた
  英国ランドローバー社のラグジュアリーSUV「レンジローバー」がフルモデルチェンジを受けた。その最新モデル試乗を国内で行うことができた。新型はスタイリッシュなデザインとさまざまなスペシフィケーションが多くのレンジローバーファンの注目を集めるところとなり、予約受注も行われているが、一部モデルは向こう3年分の生産枠が埋まってしまったという。
  レンジローバーは、ランドローバー社の歴史のなかでさまざまな進化を遂げてきている。これまでに計4回のフルモデルチェンジを受けていて、今回で5代目となる。初代の頃から言われているのは「砂漠のロールスロイス」と形容をされるように、悪路においても優れた乗り心地と、英国の伝統的な上質さと優雅さを兼ね備えたモデルとして世界中で多く顧客を抱えているのである。本国・イギリスで見れば英国王室御用達ということで王室ファミリーがランドローバー車でさまざまな場面に登場するシーンをよく見かけるだろう。
  今回フルモデルチェンジを受けた新型レンジローバーは、外観的には非常に滑らかな表面仕上げ処理がされていて、CD値0.30という優れた空気抵抗係数を可能としている。同時にLEDのヘッドライトやリヤコンビネーションランプなどが造形自由度の高さを物語っている。基本的なウエストラインやルーフラインなどの構成は歴代モデルを継承していて、4代目をさらに洗練させたような雰囲気を漂わせている。車体はバルクヘッドに鉄製鋼板を用い、適材適所の材料を使用した新型の車体プラットフォーム(MLA-Flex)となっていて、これから販売されるPHEVモデルなどを含め、フル電動化などへも転用することが可能なスペックとなっている。
  今回、国内に導入されるのは4.4リッターV型8気筒ツインターボチャージャーガソリンエンジンモデルと3リッター直列6気筒ディーゼルターボエンジンにマイルドハイブリッドシステムを盛り込んだモデルの2タイプだ。さらに今後、3リッター直列6気筒ガソリンエンジンをベースにPHEV化したモデルも追加導入されるという。また、将来的には完全電気自動車(BEV)仕様もラインアップされるということで、今後の展開も注目されるところだ。
  我々が試乗したのは、現状受注でもっとも人気が高く、予約受注停止モデルになってしまったという4.4リッターV8ツインターボのガソリンエンジン仕様である。最高出力530馬力、最大トルク750Nmという圧倒的な出力スペックを持っている。これに8速のトルコン式オートマチックトランスミッションを備えている。もちろんフルタイムのAWD駆動方式を採用している。また、トピックスとしては後輪が最大7.3度まで逆相に切れる四輪操舵4WSが装備され、これにより最小回転半径が6.1mと非常に小さくなっているのも特徴的だ。実際に試乗してみると、回転半径の小ささに何よりも驚かされるはずだ。
  室内に乗り込むとダッシュボードデザインは非常にシンプルでモダンな印象を受ける。13.1インチのタッチスクリーン方式フルHDパネルが中央に採用されていて、パネルタッチはフィンガーアクションがリターンしてくる触感フィードバック機能で操作感は非常に確実なものとなっている。またドライバー正面のメーターパネル内には13.7インチのインタラクティブドライバーディスプレイが配置され、表示コンテンツレイアウトをカスタマイズすることができる。
  ステアリングホイールは4本スポークだが、左右に上下の2本ずつ伸びる一見2スポークのような形状となっていて、ハンドルを180度回転した時もメーターの視認性が損なわれないデザインとなった。
  センターコンソールにはトランスミッションのシフトセレクターが備わり、小さな操作でDレンジやリバース、ニュートラルなどへシフト可能で、パーキングへはボタンスイッチを押すことで切り替えることができる。また、悪路などの走行性能を高めるテレインモードスイッチがその横に備わっている。
ハイパフォーマンスSUVであることに異論なし
  エンジンを始動させて走らせると、まず4.4リッターV8ツインターボチャージャーエンジンの豊かなトルクが低回転から発生し、力強い発進加速が得られる。車両重量は約2.7トンもあり、非常に重くなっているが、それを問題としない力強い動力性能が魅力的だ。また、アクセルの開度により高回転までパワーを連続的に引き出せるガソリンエンジンターボユニットならではの出力特性も、今後はより貴重さが増すことになるだろう。トランスミッションは8速でクロスレシオの変速ステップ比を持っていて市街地でも走りやすい。
  ただ、大きなトルクゆえ、高負荷時の変速には若干変速ショックを伴っている。タイヤに今回レンジローバー初となる23インチという大径サイズが採用され、またタイヤも285/40R23というスーパーカーのようなスペックだ。ブランドはピレリ社のスコルピオン ゼロが装着されている。これにより高いグリップ性能が発揮され、コーナリング性能は極めて安定して優れている。
  また、2.7トンの車重がありながら車体ロールを極力抑え4輪の接地性を高めた走行姿勢が、これまでのレンジローバーのたくましい走りと同様に引き継がれているといえる。ただ、2.7トンの車両重量が、高速域からのブレーキングに関しては、いささか不安定さを感じさせる。スチール製ディスクブレーキが採用されていて、またアンチノーズダイブジオメトリーが強めに入っているようで、ブレーキング時のノーズダイブを抑える反面、リヤホイールにジャッキアップ現象が起こり踏力に応じた減速Gの高まりが得にくい印象だった。悪路中心に考えれば、このようなハイGでのブレーキングを行うシーンはそうそうないと思うが、高速道路の緊急回避時のブレーキングなどで若干制動距離が伸びることが危惧されるところだ。
  コーナリング場面では4輪操舵が高速域では前後同相になるのでより安定感を増し、一方曲がりくねった低速コーナーでは逆相に変化するので非常に扱いやすい。2mを超える車幅でありながら、大きさを感じさせない扱いやすさがある。一方、逆相から直進状態に操舵が戻る際には若干反応が送れる場面もあり、コーナーの立ち上がりなどでリヤ追従性が不足する場面もあった。車両重量、トルク、そしてタイヤの特性などに合わせたよりきめ細かなチューニングが望まれるところと言えるだろう。
  今回の新型レンジローバーにはロングホイールベースモデルもラインアップされていて、そちらはホイールベースが3195mmとなり、全長も5265mmとなって、今回試乗したモデルよりもホイールベース、全長が200mm長くなっている。またロングホイールベース化により、3列シート配列が可能となり、これまでのレンジローバーにはなかった3列シートの7人乗りもラインアップされることになっている。
  試乗車はガソリンの最上級モデルであり、5人シートで3人がけのセカンドシートが備わっている。後席の装備も極めて豪華で専用のタッチパネルでエアコンやシートポジション、マッサージ機能なども後席独自で行える。もちろん後席もリクライニングするので、ロールスロイスに勝るとも劣らぬ後席居住性と快適性が確保されているのだ。ただ、23インチホイールの弊害もあり、路面に凸凹のある荒れた区間では車体まわりからギシギシといったきしみ音が発生したり、またドライバーはホイールの振れ、ステアリングシミーを感じさせられることもある。こうした部分は従来の4代目は非常に洗練されていたので、今度さらに熟成されていくことを期待するところだ。
  残念ながら新型レンジローバーはすでに多くの受注を抱えていて、文頭で少し触れたように、4.4リッターガソリンモデルは、今後3年分の生産枠がすべて埋まってしまっているという。したがって、しばらくの間受注停止になると言われ、昨今の自動車業界の生産キャパシティ事情が表れている。一方でディーゼルのマイルドハイブリッドモデルなど一部グレードは、試乗会の時点ではまだ受注可能なモデルもあった。購入希望者はなるべく早くディーラーを訪れる必要がありそうだ。

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