どこが便利でどこが不便? 「EV乗り」がホントのところを語る!

2022.09.19 10:00
この記事をまとめると
■バッテリーEVの現状をオーナーが考察
■ガソリン車とは違った運転技術が必要となるシーンがある
■充電速度の問題や寒冷地での使い勝手などまだまだ課題は多い
バッテリーEVが今どれほど進化したのかユーザー視点で考えてみた
  地球の温暖化を抑えるために、全世界がカーボンニュートラルの脱炭素社会へと舵を切るようになった。自動車も走行中のCO2(二酸化炭素)の排出量を削減しようと、ゼロエミッション・ビークルのバッテリーEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)を優遇するようになっている。今の段階で乗用車の本命となっているのは、バッテリーEVだ。動力源はモーターで、化石燃料の代役はバッテリー(リチウムイオン電池)が務めている。
  モーターの魅力は、アクセルを踏み込むと瞬時にパワーとトルクが盛り上がることだ。切れ目のないシームレスな加速を満喫できる。その加速はスポーツカー顔負けだ。海外のバッテリーEVのなかには0-100km/h発進加速がGT-R並みに速いクルマも増えてきた。フル加速したときは身体をシートに抑えられるほど強烈な加速Gを披露する。しかもクルージング時だけでなく加速したときでも静粛性は驚くほど高い。振動もほとんどないから、気持ちよく会話を楽しめるし、オーディオの音楽に耳を傾けることができる。
  また、家庭用機器などの電源になる「V2L(ヴィークル・トゥ・ロード)」に対応しているバッテリーEVなら蓄積した電力をどこでも使うことが可能だ。ホンダeが貯め込んだ電気で、非常時に電力をまかなうことができるのは大きな魅力だろう。蓄電池やソーラー電源とつないで使う「V2H(ヴィークル・トゥ・ホーム)機能を搭載していれば、家庭の電力さえもまかなうことができる。
  だが、いいことばかりじゃない。最初に直面するのは充電に時間がかかることだ。バッテリーEVと呼んでいることから分かるように、駆動系だけでなく、暖房や冷房などの温度調整にも電力を使っている。少なくなってくると、燃料を入れるように電気を充電するが、その充電に時間がかかるのが難点だ。販売ディーラーや高速道路のサービスエリアに設置されている急速充電器を使えば、30分で80%程度の充電と言っている。
  だが、バッテリーEVだけでなく充電器も千差万別だ。性能差も大きい。日本の急速充電器の充電規格はCHAdeMOである。だから輸入車によっては付属のアダプターをつないで利用するが、最近はバッテリー容量の大きいバッテリーEVが多いので、30分の充電だと半分も入らない。また、急速充電器と言っても、コンビニなどに設置しているのは、出力の小さい中速タイプの充電器だ。これだと30分くらい充電しても10kWhも入っていかないのである。当然、距離を伸ばすためにはおかわり充電が必要だ。遠出すると、次の充電器のお世話になることも少なくない。
充電速度が遅く寒冷地では電費が極端に落ちる問題はまだ未解決
  電気は気難しい性質を持っている。バッテリーEVによっては急速充電器を選ぶ。相性が悪いと、充電エラーが出て充電できない。電欠ギリギリで充電できないと立ち往生してしまう。筆者も電欠寸前に追い込まれたことが何度もある。また、バッテリー残量や気温などによっても入っていく電気量が異なることも、内燃機関にはない弱点と言えるだろう。
  急速充電は充電時間を短縮できる。だが、高電圧の電流を使って充電するからリチウムイオンバッテリーに負荷がかかる。頻繁にフル充電しているとバッテリーの劣化が心配だ。だから急速充電器は30分で止まるように設定し、基本的には80%充電を上限としているのである。100%充電したい人や、劣化を最小に抑えたいと言う人は、家庭用の200V、3kW(または6kW)の3口コンセントで普通充電するのがいい。これなら自宅のガレージに安価で設置することができる。
  だが、難点は充電時間が長いことだ。35.5kWのバッテリーを積むホンダeは、フル充電まで一晩(約11時間)かかる。アリアやbZ4Xのようにバッテリーを多く積んでいるクルマだと、満充電になるまで丸一日(24時間)程度かかってしまうのだ。だから多くのユーザーは、普段は普通充電だが、急ぐときや長距離ドライブするときは急速充電をしている。
  バッテリーEVの多くは、航続距離を伸ばすために重いバッテリーをたくさんフロア下に敷き詰めるようになった。だから背が高く、フロアが高くても違和感を抱かないクロスオーバーSUV的なルックスのバッテリーEVが多いのである。バッテリー容量を割り切ったホンダeは2BOXスタイルを採用し、「街乗りベスト」と割り切った。マツダのMX-30も立体駐車場を使える全高に抑えている。が、こういったバッテリーEVは少ない。多くは大柄で車重も2トン前後だから、使える立体駐車場は限定されてしまうのだ。
  内燃機関もそうだが、バッテリーEVは運転の仕方や走るルートによって電費に大きな差が出てくる。エネルギー回生を使えるバッテリーEVは、アクセルペダルの操作だけでスピードを自在にコントロールし、電気を溜めることが可能だ。だが、登り坂は苦手だし、気持ちいい加速を楽しんでいると電気をたくさん吐き出し、電費は一気に落ち込む。また、多くの回生量を期待できない高速走行も苦手なステージだ。瞬発力の鋭いバッテリーEVは、運転の仕方も変える必要がある。
  バッテリーの弱点のひとつは、温度変化に対する適応性に難があることだ。なかでも苦手なのが低温で、氷点下の寒冷地だと消耗が激しい。EVは寒い時に電気式ヒーターで車内の温度を高めようとするから電費は大きく落ち込み、航続距離はぐっと短くなる。これも内燃機関に乗り慣れている人にとっては信じられないことだ。寒いと平坦路でも電気の効率は落ちる。電費を悪化させないためにはエアコンを切り、シートヒーターやステアリングヒーターを使うというテクニックが必要だ。
  内燃機関とバッテリーEV、どちらも長所と短所がある。が、100年にわたって進化を続けてきた内燃機関と同じように、遠からずバッテリーEVも格段の進化を遂げ、不安を払拭してくれるはずだ。これから先10年で、自動車の世界は大きく変わるだろう。

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