カメラで山はもっと楽しくなる!登山好きに聞いたカメラの選び方と撮影術

2022.09.14 09:00
登山やトレッキングが絶好の季節が到来。今回は、登山をもっと楽しくしてくれる「カメラ」にフォーカスして、登山愛好家であるいのみんさんに、登山に適したカメラの選び方や撮影時のコツなどについて伺いました。
空が高くなり、トレッキングには絶好の季節がやってきました。四季折々の美しさで私たちを迎えてくれる山の自然たち。その美しさと感動をカメラで残してみませんか?
今回は、登山がもっと楽しくなるカメラの撮り方・選び方をご紹介。お話を伺うのは、国内の山々で撮影した写真をInstagramで発信している、登山愛好家・いのみん(@lalatxm)さん。ご自身の経験と写真作例も踏まえ、登山に適したカメラの選び方や撮影時のコツなど、“山がさらに楽しくなるカメラの魅力”について教えていただきました。
弱い自分を変えたくて。偶然に導かれて出会った山登りの魅力
いのみんさんが山登りの楽しさに目覚めたのは、5年ほど前のこと。「人と一緒でなければ行動できない不安症な自分を変えたい」と、はじめてのひとり旅を決行。旅先の屋久島でトレッキングに挑戦したことが登山にのめり込むきっかけだったそう。
▲いのみん(井上実花)さん

「なにか大きなことをすれば自分が変われるんじゃないかと、ひとりで旅に出てみようと考えていたんです。それならまずは手始めに屋久島へ行ってみたら? という鹿児島出身の先輩の勧めで行き先を決めました。滞在中さまざまなスポットを巡りましたが、あいにく晴れたのは最終日だけ。『せっかく晴れたのに今日帰るのか……』と肩を落としていたその日の移動中、たまたま隣合わせになった山岳ガイドの方が『参加枠が空いているよ、やってみない?』とトレッキングに誘ってくれたんです。そこで思い切って帰りの飛行機をキャンセルして参加することにしました」
そんな偶然に導かれて足を運んだのが、樹齢1,000年を超える屋久杉を擁する神秘的な原生の森・白谷雲水峡(しらたにうんすいきょう)。そこで目にした雄大な景色に心を奪われて以来、日本各地の山々を単身巡るようになったいのみんさん。現在はさらに新しい挑戦として、北アルプスの鷲羽岳と三俣蓮華岳の鞍部に位置する三俣山荘(みつまたさんそう)に勤務。登山者としてではなく、山で生活する人ならではの経験と土地への愛着は、自然との接し方や写真表現に大きな影響をもたらしたといいます。
ときめきの最高潮を切り取る。自分らしい視点で山を撮るコツ
各地の山々を巡る中で本格的に始めたカメラでの撮影。雄大な自然の美しさを等身大の視点で繊細に切り取った作品の数々は、SNSでも大きな反響を呼んでいます。見る人の心を惹きつける、いのみんさんの写真。そのどれもに共通しているのが「自分の気持ちが最高潮のときにシャッターを切ったもの」であること。
カメラを片手に山を歩く面白さや自分らしい一枚を撮るために意識していることについて、これまで撮影してきた写真のエピソードを交えつつ教えていただきました。
視線の先に広がる雄大な山との距離感がリアルに感じられる写真は、初めて東北を訪れたときに撮影したそう。
「朝日連峰をフィルムカメラで撮影しました。ひたすら茂みの中を歩いた先でパッと視界が開けてこの景色が現れたときは、夢の中にいるような感覚でした。自分が見た風景や素敵だと感じた瞬間を大きく切り取りたいので、タテ位置構図で撮影することが多いです」
夏の三俣の豊かな緑と、その中にぽつんと建つ山荘の赤い屋根。まるで絵本に出てきそうな一枚は、仕事の休憩中に撮影したもの。
「この写真は、オールドレンズ(※)で撮影したものです。鮮明には写らないけれど頭の中で見ている世界に近い景色を写し出してくれるのがオールドレンズの面白いところ。空気感やその場の匂いなんかを閉じ込めたいなというときに使っています。撮りたい画によっては、望遠レンズを使って撮影することも。遠景を撮影するときは景色の中に見つけた色や柄を切り取ってデザインするような感覚で撮影しています」
※オールドレンズ:フィルムカメラ用の古いレンズのこと。レンズによってはアダプターを使用すれば一眼レフカメラに装着することも可能。
歩くたび思いがけない景色に出会えるのは山歩きの醍醐味。一方で、ひとつの場所をじっと見つめ続けることで出会える瞬間もあるといいます。
「カメラを持っていると、長時間同じ場所にいることも楽しめるんです。光や霧の粒子、生き物や植物の様子など、歩いているときには見えない美しい瞬間がたくさんあります。この写真も、しばらくこの場所にいたところにやってきた蝶々が花にとまったところを撮ったものです」
三俣山荘の社長の娘さんと出かけた先で撮影したという写真たち。
「風景の中にその人がいて初めて成り立つような写真が好きですね。原始の世界と人間の文化って切り離されてるじゃないですか。だけど、自然の中を歩いている人は生きている生物だから、いわゆるポートレートではなく人が自然と一体化しているような写真を撮りたいなと考えています」
北アルプスにある廃道となっている伊藤新道(いとうしんどう)から見える景色。
「伊藤新道は、手つかずの自然が残る道。そんな自然の中に入り込んで写真を撮ることがすごく好きです。いま、三俣山荘の社長が先代の意志を継いで復興に向けて動いていて、現在は沢登りなど上級者向けの道ですが、橋を掛けるなどして来年には開通予定です。長い歴史のある古道ですが、こういった写真も今しか撮ることが出来ないんじゃないかなって思っています」
「去年と今年とで、写真の撮り方も変わってきています。というのも、以前は情報として伝わりやすい写真を意識して撮っていたんです。けれど今は、『誰かに見せるため』という視点を排除して、とにかく自分が楽しいと感じる写真を撮るようになりました。山を歩いていると樹齢何百年の木があるわけで、そういったものたちに目を向けながら自分が頭で思い描いている世界をどうすれば写せるのかなって考えています」
カメラは相棒!登山者の視点で見る機材選びのポイントとは?
現在、いのみんさんが愛用しているのは、富士フイルムのデジタル一眼・X-T4とフィルムカメラ。なお、デジタル一眼の購入にあたっては、またしても家電量販店に偶然居合わせたというベテラン登山家の販売スタッフによるアドバイスを参考に選んだそう。
「たまたま接客してくださったスタッフの方がエベレストやK2に登るレベルのクライマーの方だったんです。その方の勧めもあって、画質が良く、持ち運びがしやすい重量とサイズ感、かつ過酷な環境でも安心して使える防塵防滴性能を搭載したミラーレス一眼(※)を選びました」
※ミラーレス一眼:一眼カメラ内部にあるミラー機構をなくすことでコンパクト化を実現した、一眼レフカメラと同等の性能を持つレンズ交換式カメラ
「霧雨の中で撮影することもあるので、防滴性能のカメラは頼もしいですね。レンズやフィルムは湿気大敵、カビてしまわないよう乾燥剤と一緒に保存袋に入れるようにしています。また、登山しながらモバイルバッテリーで充電したり頻繁に交換するのは現実的じゃないので、バッテリー容量もカメラを選ぶうえでポイントになると思います。私はいつも予備バッテリーを3個持ち歩いていますが、今使っているカメラは交換の頻度が少なくて済むので助かっています」
「私の場合、三脚を使わず手持ちで撮影するので、手ブレ補正も必須機能。夕陽が落ちた直後の空ってすごくキレイなんですけど、ほんの数分で真っ暗になってしまうんです。そんなときに手ブレ補正があれば薄暗い時間帯でも三脚なしでブレずに写せるので、撮りたいと思った瞬間を逃すことがなくなるんじゃないかなと思います」
「カメラは、言わば相棒。なので、機能だけにこだわらず、見た目の好みや手に持ったときのフィット感など、とにかく自分に一番しっくりくるカメラを持つことが写真を楽しむコツなんじゃないかなと思います。私も最初は鮮明で誰が見ても綺麗だと感じるような写真を撮りたいと考えていましたが、最近はオールドレンズを使って鮮明ではない代わりに自分の表現を追求するようになりました。カメラを持つことで生まれる新しい視点や出会いは、きっと登山と人生をもっと面白くしてくれるんじゃないかなと思います」

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