クルマ好きの大好物MT! でも知らない人多数! クラッチを踏んでレバーを動かすと「内部」で何が起こってる?

2022.09.05 17:30
この記事をまとめると
■MTとATの違いは変速作用を人間が手動で行うか機械が自動で行うかにある
■MTの場合、エンジンとミッションの接続を切り離してギヤを切り替えるためにクラッチが必要だ
■現在のすべてのMT車にはシンクロナイザー機構が組み込まれている
MTとATの違いはどこにある?
  運転免許の歴史をたどると、16歳で軽自動車の免許が取得できたり、自動車の免許を取得すると自動二輪の運転資格がオマケでついてきた時代もあった。いま考えれば、夢のような免許制度だが、普通自動車免許の種類で目立つ変化が見られたのは、1991年にAT(自動変速機)限定枠が設けられたときだった。
  当時を振り返ると、MT車に対するAT車の比率が大きく増え、特殊なモデルを除きほとんどのモデルでAT車が用意される時代となっていた。自動車を日常の足、道具と考えれば、走らせるためにシフトレバーとクラッチペダルの操作が必要なMTに対し、シフトセレクターをDポジションに入れておき、アクセルとブレーキの操作だけで走らせることができるAT車は、老若男女を問わず煩雑な運転操作を必要としない方式として歓迎された。
  では、MTとATの構造的な違いはどこにあるのか? 自動車の変速機について少し考えてみることにしよう。両者の違いは、文字どおり変速作用を人間が手動で行うか、機械が自動で行うか、という点にある。
  ちなみに、なぜ変速機が必要なのか。それは動力源となる内燃機関のトルク特性に起因する。クルマを走らせる、つまり動かす力は、エンジンのトルク(回転力)によるものだが、内燃機関のトルク特性は、低速回転域から高速回転域にいたる回転全域で、山なりのカーブを描いている。極低速域では力がなく、回転上昇とともに力が増ましていき、ある回転数で最高値に達すると、今度は減少していくことになる。
  余談だが、最高出力はエンジン回転数とそのときに発生しているトルク値を掛け合わせたもので、その発生回転数は回転上限値でない。なぜなら、高速回転域は回転数が上がってもトルク値が減少するため、回転数の上昇とトルク値の下降値がもっともバランスしたところで最高出力は得られている。
トルク特性にあわせてエンジン回転数を調整するための機構
  さて、クルマの動力伝達だが、エンジンで発生した力はトランスミッション(以下ミッション)を介して駆動輪に伝えられる。この間、内燃機関にはトルク特性があるため、変速機によって駆動輪に伝えるエンジン回転数を調整する(変化させる)必要が生じてくる。そのためには、エンジンとミッション(変速ギヤ)の接続状態を、いったん切り離してギヤを切り替える必要がある。エンジンとミッションの軸がつながったままだと、ギヤの切り替えはできない。力づくでギヤを切り替えようとしても、エンジンとミッション(ギヤ装着シャフト)の回転数が合わず、ギヤが切り替わらないばかりか、ミッションを壊すことにもなってしまう。
  このため、速度(エンジン回転数)に応じてミッションのギヤを切り替えようとした場合、物理的にエンジンとミッションの動力伝達状態を切り離さなければならない。この動力伝達の断続を行う機構がクラッチで、断続操作を行うのがクラッチペダルである。クラッチペダルを踏み込むことで、エンジンとミッション間の動力伝達が切り離され、シフトレバーを操作することで、ミッションの入力軸とつながるギヤを切り替えることになる。ギヤを切り替えた(シフトレバーの操作完了)ところでクラッチペダルを戻すと、エンジンとミッションの動力軸が再びつながり、エンジンの回転力が駆動輪に伝えられることになる。
  ちなみに変速時のミッションは、回転数の異なるギヤ同士の噛み合わせ、あるいは一方が回転状態、もう一方が停止状態のギヤと噛み合わせるため、両者に回転差が生じてギヤの噛み合わせがうまくできない。この問題を解決するため考え出されたのがシンクロナイザー(回転同調)機構で、現在のMT車にはすべてこの方式が組み込まれている。
  当たり前の話だが、自動車が誕生した当時はすべてMT方式。もちろん、シンクロ方式(英アルビス社考案)などは存在せず、時代を追ってシフト操作の問題点に対処するため、いろいろなメカニズムが考案され、採用されてきた。こうした意味では、変速時にエンジン動力の分断を行わず、封入したオイルで動力伝達、衝撃緩衝を行うトルクコンバーター方式による自動変速機は、よく考えられたシステムと言うことができるだろう。

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