Traveling to Japan Heritage Sites本物に出合える日本遺産の旅③ 大阪湾に沈む太陽の道、日本最古の国道

日本で最初の「国道」が誕生したのは、いつのことかご存知でしょうか。答えは、はるか昔の飛鳥時代。推古天皇21（613）年に、難波から飛鳥の都まで「大道」が置かれたと『日本書紀』に記録が残されています。
大道の原型は三輪山と二上山を直線で結ぶ道であったとされ、これは春分と秋分の日に太陽が三輪山の山頂から昇り、二上山を越えて大阪湾に沈むという太陽の軌道に基づくといいます。そのため、この道は「太陽の道」とも呼ばれています。

奈良県桜井市にある三輪山。『古事記』『日本書紀』に、大物主神（おおものぬしのかみ）が鎮座する聖なる山として記されている。山全体が大神（おおみわ）神社のご神体で、朝日が昇る風景はひときわ神々しい。
大道のルートは、難波京朱雀大路よりまっすぐ南下する難波大道、堺から河内を抜ける竹内街道、さらには奈良盆地を東西に走る横大路から飛鳥にいたる上・中・下の3つの道に当たるとされます。この道が辿る1400年の歴史の移り変わりを周辺の歴史遺産を通して感じることができ、そのストーリーは、日本が誇る文化・伝統をストーリーとして認定する取り組み「日本遺産（Japan Heritage）」として認定されています。
大道は歴史のなかで、様々な人や物資が往来。古代には、外交使節や遣隋使・遣唐使らがこの道を使って多くの技術や文物を都にもたらしました。聖徳太子ゆかりの四天王寺には、広大な寺域に荘厳な伽藍（がらん）が配され、大陸から伝えられた仏教文化を感じとることができます。

推古天皇元（593）年、聖徳太子が建立した四天王寺。壮大な西大門は極楽浄土への入口とされ、“極楽門”の通称で親しまれている。現在の門は、昭和37年に松下幸之助氏の寄贈により再建されたもの。
時代が下り中世になると、大道は町々を結び、物資を運ぶ街道として発展。なかでも堺は南蛮貿易や日明貿易の港湾都市として高い経済力を持つようになります。また堺では、日本最大の仁徳天皇陵古墳の築造によって鍛冶（かじ）技術が発達し、戦国時代には鉄砲やタバコ包丁が作られました。「堺刃物」のルーツはタバコ包丁で、今も街には刃物店や工房があります。

タバコ包丁で隆盛を極めた堺。今も街には刃物店や工房が多くあり、見学や体験ができる場所も。
江戸時代になると、大道は大阪と奈良から伊勢へとつなぐ伊勢神宮参拝の「お蔭参り」の道へと役割を変化させていきます。太子町には旅籠（はたご）や茶屋が立ち並び、通り沿いには道しるべとなる灯ろうが設けられました。沿道自治体のイベントとして、毎年10月に大阪府太子町において竹内街道灯路祭りを開催していて、街道を灯ろうで浮かび上がらせ、町民が古人に扮して街道を練り歩く時代行列が行われます。
時代に応じて役割を変えながら、1400年以上にも及ぶ歴史をつむいできた一本の道。大道はさらに未来へ向けて、新しい時間を刻んでいきます。

毎年10月に開催される竹内街道灯路祭り。街道に点る灯ろうのほのかな明かりが幻想的。
大きな窓から一望できる
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