実用的な軽自動車の代表格、スズキ・アルトの魅力に迫る

2022.08.19 13:00
この記事をまとめると
■9代目のスズキ・アルトの魅力を解説
■さらに歴代モデルの振り返りも
■軽自動車の本来の姿を表現したクルマだ
いまどきの軽スタンダードを目指し登場した9代目
「アルト47万円」と衝撃的な価格設定でデビューを果たした初代から42年後に登場した9代目アルト。初代同様、ベーシックな良さを主張する軽自動車ですが「シンプル・イズ・ベスト」だけでなく時代のニーズに合わせ先進安全支援システムやハイブリッドが搭載されています。
  新世代の軽スタンダードを目指し開発された9代目アルトが、どんな魅力を備えたクルマなのかをさっそく見ていきましょう。
エクステリア・ボディサイズ
  原点回帰をテーマに目力が強くシンプルでクリーンなデザインを採用していた先代モデルから、ヘッドライトや前後バンパーなどが丸みを帯びた形状となった9代目アルト。先代と比べピラーやバックウインドウの傾斜を立てられているのも特徴です。
  9代目アルトのボディサイズは全長3395mm、全幅1475mm、全高1525mm、ホイールベース2460mm。先代より全高が25mmほど高められました。
  また回転最小半径が4.4mと先代と比べ0.2mほど大回りとなっています。
  足回りはフロントがマクファーソンストラット式、リヤがトーションビーム式、4WDはアイソレーテッド・トレーリング・リンク式のサスペンションを採用しました。
インパネ・室内空間
  スズキが「毎日乗ってもここちよいインテリア」と説明するように、9代目アルトのインテリアはシンプルで飽きのこないもの。ただ、左右に渡るアイボリーのパネルが特徴的だった先代に比べ9代目のインパネは立体的なものへとチェンジし黒基調となったためか、華やかさや明るさは先代のほうが上回っていたように思えます。
  シフトレバーは先代同様、インパネシフトを採用。メーターもシンプルな造形でまとめられました。
  室内高が先代より45mm高められているためか、運転席まわりの空間はゆとりを感じるほど。
  またピラーが先代より立てられているためドライバーズシートに座ると視界が良く、運転しやすいことに気が付きます。
  リヤシートもハイトワゴンほどではないものの、スペースは十分といえるレベル。
  ただ、ビジネスユースがターゲットとなる廉価グレード「A」のリヤドアはガラスがはめ殺しになっており開閉できないのはご愛嬌です。
ラゲッジルーム
  軽自動車であるアルトのラゲッジルームは奥行きが約400mmと当然ですが広くはありません。ただ、リヤシートを倒すと段差がないフラットなラゲッジフロアが登場。左右の張り出しもなく使いやすいスペースとなっています。
  またテールゲートにインサイドグリップが装着。細かいところですが日常使いで嬉しい工夫がなされています。
先進安全装備
  9代目アルトはスズキの予防安全技術「スズキ・セーフティ・サポート」を装備。
  衝突被害軽減ブレーキをはじめ、誤発進抑制機能、車線逸脱機能、先行者お知らせ機能、後方誤発進抑制機能、ふらつき警報機能、ハイビームアシスト、さらにメーカーオプションで標識認識機能、全方位モニター用カメラ、ヘッドアップディスプレイを備えています。
  ただ、ワゴンRスマイルやスペーシアなどに装備される渋滞対応ACCが装備されていないのは残念なところ。とはいえ、今どきの軽自動車に必要な安全装備は身につけています。
軽自動車No.1低燃費を可能としたマイルドハイブリッド
  9代目アルトに用意されたパワーユニットは2タイプ。ひとつはエネチャージを搭載する660cc直3エンジン、もうひとつはエンジンに加えモーターを備えたマイクロハイブリッド。先代に用意されていたターボエンジンがラインナップされていませんが、最大のトピックスはシリーズとして初となるマイルドハイブリッドを搭載したことでしょう。
  マイルドハイブリッドとはモーター機能が付いた発電機の“ISG”が減速時に回生により充電。その電力を使用してモーターが加速時にエンジンをアシストするシステム。先代や現行モデルにも用意されているエネチャージではできないモーターのみの走行を可能としています。
  もっと詳しく説明すると、減速時にISGで発電。その電力がバッテリーへ充電され、その電力でクリープ走行時に約10秒間モーターのみで走行するものです。発進後から加速時にモーターでエンジンをアシストすることで燃費性能を向上させました。
  一方、エネチャージはマイルドハイブリッドと同じく減速時に発生するエネルギーを利用してオルタネーターで発電。その電力を電装品にバッテリーから供給することでエンジンの負担を軽減するシステム。つまりマイルドハイブリッドは回生エネルギーで貯めた電力を走行に使用しますが、エネチャージはエアコンなどの電装品のみに使うという違いがあります。
  また、アイドリングストップシステムやアイドリングストップ中でも冷たい風を一定時間キープするエコクールなど低燃費に貢献する装備も搭載。ハイブリッドシステムやこれらの装備により、マイルドハイブリッドを搭載した9代目アルトのWLTCモード燃費は27.7km/L。軽自動車No.1の低燃費を実現しました。ただ、エネチャージ搭載モデルもWLTCモード燃費は25.2km/Lとこちらも高い燃費性能を誇っています。
軽自動車界の革命車、歴代アルトを振り返る
  商用カテゴリーに入る軽乗用車、と斬新な発想の元にデビューした初代アルト。当時、低迷していた軽自動車業界に新たな旋風を巻き起こしました。現行モデルとなる9代目まで、歴代アルトがどのような歴史を経てきたかを振り返りましょう。
初代(1979〜1984年)
  軽乗用車のフロンテをベースに荷室スペースを拡大するなど物品税が非課税だった軽ボンネットバンに仕立てた初代アルト。合わせて徹底したコストダウンを行い、当時の軽自動車価格の平均を大きく下回る47万円で発売したことが話題と衝撃を与えました。
  デビュー当時は550cc 2ストロークエンジンと4速MTが組み合わされていましたが、その後、2速ATを追加。1981年には550cc 4ストロークエンジンモデルも設定されています。
  初代が大ヒットしたことで他社も軽乗用車を軽ボンネットバンに仕立てて発売。軽自動車のスタンダードとなり軽ボンネットバンが大いに売れたため軽商用車に2%の物品税が課せられることになりました。ただ対象となるのが4人乗りだったことで、アルトは非課税となる急遽2シーターモデルを設定し対応しました。
2代目(1984〜1988年)
  軽自動車に新たなムーブメントを巻き起こした初代の後を受け1984年にフルモデルチェンジで2代目が登場。デビュー時から全車に4ストロークエンジンを搭載し上級モデルにはディスクブレーキ(フロント)が施されるなど質感と機能の向上が図られています。
  初代から女性ユーザーの取り組みに力を入れていましたが2代目も追従。テレビCMで話題となった回転ドライバーズシートやカラードバンパー、カラードフルホイールカバーを装着した女性ユーザー向けの特別仕様車を設定していきました。
  またターボエンジンや4WDを追加し、男性ユーザーをターゲットとした“アルトワークス”を1987年に設定するなどラインナップを拡大。アルトワークスは最高出力64psを発揮するエンジンを搭載しフルタイム4WD仕様も用意するなど走りに特化した軽スポーツとして話題を集めました。女性向けかつリーズナブルなモデルだけでなない、新たな価値観をアルトに生み出しだしたのが2代目の特徴でしょう。
3代目(1988〜1994年)
  丸みを帯びた2代目のフォルムからエクステリアデザインを一新。直線基調でスタイリッシュなフォルムで身をまとい1988年に3代目は登場しました。
  先代に設定したアルトワークスも引き続きラインナップ。アルトワークスにはラリー用ベースモデル“ワークスR”が追加されています。
  また1991年にはBピラーから後部に背高キャビンを配した“ハッスル”を追加設定。現在、主流となっているハイトワゴンに似たコンセプトを採用していたのは興味深いですね。
  また標準ボディにも両側スライドドア仕様が設定されていたこともトピックスのひとつです。
  3代目の販売中に軽自動車規格が変更となり、1990年には前後バンパーを大型化しボディサイズを拡大。エンジンを660ccへ変更し対応しています。また物品税が廃止され消費税が導入されたことにより、減税のメリットが薄れた4ナンバー車だけでなく5ナンバー車もアルトに初めて設定されました。
4代目(1994〜1998年)
  規制や税制の変更を受け様々な対応をした3代目からフルモデルチェンジで登場した4代目。エクステリアデザインは先代と比べやや丸みを帯び、オーソドックスなフォルムへ生まれ変わりました。
  ちょうどバブル経済が崩壊した時期に登場したためか、両側スライドドア仕様や上級グレードを整理。ただ、人気モデルとなったアルトワークスはラインナップされ、走行性能を向上させています。
  他の軽自動車や普通車と同様に景気の悪化からコストダウンを図ったことでユーザーからの評判はイマイチ。マイナーチェンジで外観などを仕立て直しますが、スズキから1993年に初代ワゴンRがデビューし、ユーティリティ性能を重視するユーザーが増えたことから先代ほどの人気を集めるには至りませんでした。
5代目(1998〜2004年)
  軽自動車に安全衝突基準を採用するため全長3400mm、全幅1480mmとなった軽自動車規格改正にあわせボディサイズを大きくし登場した5代目アルト。先代同様、コストダウンを念頭にした内外観を備えています。
  ワークスも継続して販売されていますが、ラリーベース仕様の“ワークスR”は廃止。ワークスをベースに快適装備を配した特別仕様車などが販売されましたが、2000年のマイナーチェンジでワークス自体が廃止となりました。5代目一番のトピックスがワークスの消滅といえるでしょう。
  5代目にはワークスと対極ともいえるリーンバーンエンジンを搭載した“エボターボ”、また訪問介護ヘルパー向けの“訪問介護車”などを設定。新たな時代のベーシック軽を模索したモデルとなりました。
6代目(2004〜2009年)
  軽自動車にも最低限の快適装備が求められる時代となったことで、全グレードにエアコン、パワステが装備された6代目。またハイトワゴンが人気を集めていたことで全高や室内高を高め居住空間を拡大しています。
  先代に設定されていたリーンバーンエンジンは廃止されK6A型エンジンのみを搭載。グレードも3種類へと整理するなどシンプルな構成になりました。
  また一部で熱望されたワークスの復活ですが6代目には設定されませんでした。歴代モデルを振り返るなかで、この6代目はかなり印象が薄いモデルといえます。
7代目(2009〜2014年)
  その当時流行っていたキャブフォワードスタイルを取り入れたエクステリアが目を引く7代目アルト。7代目は2009年のグッドデザイン賞を受賞しています。
  このモデルではとくに燃費性能が重視され、メーター内に瞬間燃費、平均燃費などを表示するディスプレイを備えたことや、ボディ全体で計量界を図りアイドリングストップシステムなどを装備した低燃費仕様“アルトエコ”を追加しました。
  アルトエコを中心に燃費性能の向上をモデル末期まで続け、2013年のマイナーチェンジ時には35.0km/L(JC08モード燃費)を達成しています。
8代目(2014〜2018年)
  プラットフォームを全面刷新しとくに走行性能の向上が図られた8代目。燃費性能も軽量化などで実現した先代のエコモデルを超える37.0km/L(JC08モード燃費)を実現しています。
  ただ、8代目の大きなトピックスはアルトにスポーツ仕様が設定されたこと。デビューから約3ヶ月後に“ターボRS”、1年後には“ワークス”が追加されました。
  この2車は見た目で違いを判別することが難しいのですがワークスはしゃかりきに走りを楽しむスポーツ仕様、ターボRSは標準仕様をベースにエンジン専用チューンやサスペンションの変更などでスポーティに仕立てたモデル。どちらもアルトのスポーツモデルを待ちわびていたファンから多大な支持を集めています。
アルトのグレードとおすすめ
  9代目のグレードはエネチャージとマイルドハイブリッドと2つのパワーユニットそれぞれに2タイプを設定。
  エントリーグレードとなるのがエネチャージエンジンを搭載する「A」でFFが94万3800円、4WDが107万5800円となります。ただ、「A」は「スズキ・セーフティ・センス」は標準装備となりますがプッシュスタートやフルオートエアコン、運転席シートリフターが装備されてなく、リヤドアガラスが開閉できない埋込式となるなど日常使いには厳しいグレード。いまどきの軽自動車では珍しい100万円を切る車両価格は魅力ですが、購入はおすすめできません。
  続くグレードが同じくエネチャージを積む「L」でこちらはFFが99万8800円、4WDが112万9700円。また「L」にはフルオートエアコンやLEDヘッドランプが備わる“アップグレードパッケージ装着車”が用意され、こちらはFFが113万800円、4WDが126万1700円となります。またアップグレード装着車はホワイト2トーンルーフ仕様が選択可能になるなど、9代目のメイングレードとなっているようです。
  軽自動車で最も良い燃費性能を誇るマイルドハイブリッドも2グレードを選択可能。「ハイブリッドS」はFFが109万7800円、4WDが122万8700円。さらにLEDヘッドランプ装着車が用意されており、こちらはFFが115万5000円、4WDが128万5900円。
  9代目アルトの最上級グレードとなるのが「ハイブリッドX」でFFが125万9500円、4WDが137万9400円。このグレードにはプラス11万2200円で全方位モニター付ディスプレイオーディオが、プラス7万9200円で全方位モニター用カメラを装備することが可能です。
  ガソリン車とハイブリッド仕様を両方用意している車種の場合、その価格差は大きいのが一般的ですがアルトはそこまで大きな価格差がありません。
  ただし燃費の差もそこまで大きくないため全方位モニター付ディスプレイオーディオを装着したいのであれば「ハイブリッドX」、そうでなければ欲しい装備がまんべんなく備わる「L」のアップグレードパッケージ装着車が筆者のイチオシグレードです。
まとめ
  燃費性能、安全装備が充実、かつリーズナブルな価格設定と新世代の軽スタンダードを目指した9代目アルトの実力は相当高いことがわかりました。
  後は先代に用意されていたワークスが復活すれば……と期待するファンも多いことでしょう。
  9代目に追加されるかどうかは微妙かなと思われますが、アルトの魅力をさらに増すためにもワークスの復活を祈りたいものです。

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