性能は互角なのになぜ負ける? 販売台数で明暗クッキリのガチライバル車2組の理由を探った

2022.07.27 11:40
この記事をまとめると
■軽自動車とコンパクトカーでライバル車種の売り上げを比較
■優れた機能やユーティリティをもってしても勝てない場合が多い
■中身で勝負する前にどうしてもデザインが優先されがちと言える
「よければ売れる」ほど単純ではないライバル車たちの戦い
  販売の好調な車種は、多くのユーザーが使っている優れた商品だ。劣悪な商品が宣伝によって好調に売られるほど、日本の顧客と市場は甘くない。
  しかし、売れていないから劣った商品と判断することもできない。商品力は高いのに、販売体制や宣伝のされ方などにより、売れ行きが伸び悩むことは少なくないからだ。そのような車種と好調に売られる人気のライバル車を比べたい。
■軽自動車:ダイハツ・タント vs ホンダ N-BOX
  2022年1〜6月におけるタントの届け出台数は、1カ月平均が約7400台だ。一般的には立派な売れ行きだが、ライバル車のN-BOXは、同じ時期の1カ月平均が約1万7300台に達した。N-BOXは、1カ月平均でもタントに比べて約1万台多く、比率に置き換えれば2.3倍になる。
  販売格差は大きいが、機能やデザインの水準は互角に近い。N-BOXは内外装の質感、静粛性、乗り心地で上まわる。
  その一方でタントは、後席の座り心地と走行安定性を現行型で大幅に向上させた。また、左側のピラー(柱)をスライドドアに内蔵させるから、前後のドアを両方ともに開くと、開口幅が1490mmまで広がる。ベビーカーを抱えた状態で乗り降りできるから、雨天時などには快適に使える。このようにタントがN-BOXより優れた点も多い。
  それなのに販売格差が拡大した理由は、N-BOXが前輪駆動の軽乗用車では、最大級の室内空間を備えることだ。前述のとおり内装も上質だから、購買意欲も刺激される。先代型の高人気により、乗り替え需要も豊富だ。ホンダの小型車ユーザーまで奪って、好調に売られている。
  対するタントは、標準ボディのフロントマスクが地味で、内装の質もいま一歩だ。実用性は高いが、選択の決め手に欠ける。しかもスライドドアを備えたムーヴキャンバスも堅調に売られて、需要が分散された。
パッケージングに優れる反面、肝心なデザイン面で苦戦
■コンパクトカー:ホンダ・フィット vs トヨタ・ヤリス
  2022年1〜6月におけるフィットの登録台数は、1カ月平均が約4900台だ。ヤリスは約6500台になる(ヤリスクロスとGRヤリスを除く)。ヤリスはフィットの1.3倍売れている。
  ヤリスはハイブリッドになるとWLTCモード燃費が35.4〜36km/Lで、日本で購入可能な4輪車ではもっとも燃費性能が優れている。フィットe:HEVの23.2〜29.4km/Lに大差を付けた。車両重量はフィットに比べて100kg以上軽いから、動力性能や運転感覚も軽快だ。
  その代わり、ヤリスは後席が狭い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシひとつ少々だ。それがフィットなら握りコブシふたつ半だから、シビック並みの余裕がある。フィットは4名で乗車しても快適だ。
  また、フィットは燃料タンクを前席の下に搭載するから、後席を小さく畳んで大容量の荷室に変更できる。さらに、前後左右ともに視界が優れ、乗り心地も快適だ。
  ここまでフィットの実力が高いのに、販売面で伸び悩む理由は、N-BOXに需要を奪われているからだ。今は国内で新車として売られるホンダ車の内、36%をN-BOXが占めるから、すべてのホンダ車が影響を受けている。
  また、フィットのボディは視界に優れ実用的だが、ヤリスに比べるとカッコ良さがいまひとつ冴えない。

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