国産EV危うし! 中国トップNEVメーカー「BYD」が3台のEVを引っ提げてニッポン上陸

2022.07.26 13:00
この記事をまとめると
■中国ナンバーワンNEVメーカーの「BYD」が日本乗用車試乗参入を発表
■日本市場に「アット3」「ドルフィン」「シール」という3台のEVを導入する
■「アット3」に試乗して中国産EVを初体験した
EVバスだけじゃない! BYDのEVに日本でも乗れる
「BYD」というメーカーをご存じだろうか? 多くの人は「聞いたこともない」というのが正直な返答かもしれない。一方、もしあなたがバスマニアであったら、名前くらいは耳にしたことがあるかもしれない。なにせBYDは、日本のEVバスのカテゴリーで、そのシェア約7割を誇るトップメーカーなのだから。そう、日本においてBYDはEVバスのメーカーであり、一般人にとっては、ニッチな市場のトップメーカーであるに過ぎなかった。少なくともこれまでは。
  ここで簡単にBYDがどんなメーカーなのかを説明しておくと、元々は中国で1994年に設立されたバッテリーメーカーで、2000年代初頭にモトローラやNOKIAの携帯電話のバッテリーとして採用されて業績を伸ばすと、携帯電話の受託生産なども請け負うようになる。そして2003年には中国国営自動車メーカーを買収するまでに成長し、これまでに培ったバッテリーと携帯電話製造技術のノウハウを活かしてPHEVとEVを生産。すると、これが中国で大ウケ。いまやBYDは、中国のNEV(New Energy Vehicle)の売上で9年連続でナンバーワンを記録し、グローバルで200万台以上のNEVを販売した中国一のNEVメーカーとなったのだった。
  そんなBYDが、ついに日本の乗用車市場に参入することを発表したのだ。その発表会に多くの注目が集まったのは当然かもしれない。
  発表会場にはベールに包まれた3台のクルマが報道陣を待ち構えていた。その3台は、ベールの上からでもフォルムが異なっていることがわかる。それぞれの車両の上には「シール」「アット3」「ドルフィン」という車名も掲げられている。つまりBYDは、3モデルをもってして日本進出を図るということだ。期待は膨らむ。
  そしてBYDジャパンの劉社長が登壇。劉社長は、2035年までに新車販売で電動車100%を実現するとした日本政府の決定の一方で、いまだ「EVの価格の高さ」や「充電設備の不足」、「航続距離の短さ」などがネックとなってEVの普及が進んでいない日本に、高い安全性と航続距離を持ったEVを手頃な価格で提供してきたBYDが、「eモビリティを、みんなのものに」する一助となることを確信。日本乗用車市場への参入を決定したという。
  果たして、劉社長の言葉が示すように、アンベールされた3モデルはすべてがEVであった。ミドルサイズSUVの「アット3」、コンパクトカーの「ドルフィン」、ハイエンドセダンの「シール」。いずれも2021年から2022年にかけて中国で販売が開始された新しいモデルであり、その評判も上々だという。
  まず先陣を切ることになるのがアット3だ。全長4455×全幅1875×1615mmでFWDのミドルサイズSUVで、モーター出力150kW/モータートルク310Nm、電池容量は58.56kWhで航続距離は485km。いまどきのシンプルなデザインが良くも悪くも特徴で、購入者を選ばないクセのないモデルといった印象。日本導入時期は2023年1月頃を予定する。
  アット3に続くのがドルフィン。全長4290×全幅1770×1550mmでFWDのコンパクト5ドアハッチバックで、スタンダードとハイグレードを用意する。スタンダードはモーター出力70kWで電池容量は44.9kWh、航続距離は386km。ハイグレードはモーター出力150kWで電池容量58.56kWh、航続距離は471km。1770mmという全幅が、日本にもベストマッチしそうな雰囲気。日本導入時期は2023年中頃を予定する。
  最後に導入されるのがシール。全長4800×全幅1875×1460mmのセダンで、こちらもスタンダードとハイグレードを用意。スタンダードはRWDで最高出力230kW、ハイグレードはAWDでフロントモーター出力160kW、リヤモーター出力230kW。いずれもバッテリー容量は82.56kWhで航続距離は555kmとなる。BYDの最新モデルであり、見た通りエレガントでスポーティなスタイリングを特徴としている。日本導入予定は2023年下半期の予定だ。
クオリティが高くて安い中国産EVに日本危うし!?
  じつは今回、非常に短い時間ではあったが、アット3に試乗することができた。アット3の運転席に座った率直な印象は、エクステリアと同様に「シンプル」。
  インパネは小ぶりな液晶メーターとセンターディスプレイのみというスッキリとした構成で、センターコンソールにはシフトレバーと必要最低限の物理スイッチが配される。
  インテリアはスポーツジムと音楽スタジオをイメージしているそうで、なるほどエアコンの吹き出し口はダンベル、ドアポケットはギターの弦がモチーフになっているのがわかる。
  面白いかったのは、センターディスプレイを「横表示→縦表示」と回転させられるところ。縦表示にすれば、まるで巨大なスマホがインパネにあるかのような印象だった。
  非常にデザイン感度の高い洗練された空間にはいっさい安っぽさはなかった。
  ちなみに後席にも座ってみたが、BYD最新のEVプラットフォームのおかげもあってか、床がフラットで足もとスペースも広くて快適。巨大なパノラマルーフによって非常に開放感にあふれていた。
  さて、気になる試乗。アクセルを踏んだときの加速はEVらしい鋭いもの。ドライブモードは「ノーマル」「エコ」「スポーツ」の3つが選べ、また制動による回生の強さも調整可能だ。今回の試乗は、発表会場まわりの一般道をぐるっと1周するだけの本当に簡易的なコースであったため、試せたことは非常に少ないが、その間にネガティブなことを感じることは一切なかった。
  ステアリングはリニアに反応するし、キビキビと走るし、乗り心地もいたっていい。頭の片隅には常に中国クオリティを意識していたのだが、それはいい意味で完全に裏切られた。どうやら「中国製」のイメージを根本から書き換える必要がありそうだ。
  さて、こうなると気になるのは、購入後のサービス体制だが、BYDでは、昨今流行りのインターネットによる車両販売ではなく、ディーラー網をきちんと整備しての販売を行うという。日本全国にどのくらいのBYDディーラーが用意されるかは不明だが、少なくとも車両の修理で路頭に迷うということだけはなさそうだ。
  今回発表された3モデルは、いずれも2023年内の日本導入を目指しており、価格の発表はなかった。バッテリー容量や装備が日本仕様として予定されているものとは異なるため、そのまま単純に比較することはできないが、参考までに中国においては、アット3は13万7800〜16万5800元(約280万〜335万円)、ドルフィンは10万2800〜13万800元(約210万〜265万円)、シールは21万2800〜28万2800元(約430万〜585万円)で販売されている(いずれも編集部調べ)。
  今回試乗したアット3はオーストラリア仕様の右ハンドルモデルであるらしく、現地では4万4990〜4万7990オーストラリアドル(約424万〜452万円、編集部調べ)で販売されているから、日本仕様の価格もそれに近いものになると予想できる。いずれにしても、このサイズ、クオリティのミドルサイズSUVがEVとして400万円台で買えるとしたら、それはかなり魅力的となるように思うがいかがだろうか。
  一挙3モデルを日本に導入するというサプライズのあったBYDの発表会。正式な価格の発表、そしてローンチが楽しみで仕方がない。

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