男性の育休取得率100%のピジョンが、社員とともに育児制度を改訂~男性も女性も仕事と家庭を両立しながら働きやすい社会に

2022.06.10 11:00
1957年の創業以来、育児・マタニティ用品の製造・販売を手がけるピジョン株式会社が、2022年3月より新しい育児制度の運用を開始しました。
ピジョンは男性でも育休が取りやすくなるよう、2006年に大きく育児制度を改訂し、2016年以降は、男性の最低1ヶ月以上の育休取得率が100%を維持しているなど、育休を取得しやすい環境や社内制度が整っていました。
しかし、近年の働き方の多様化に伴い、「本当にいま必要とされている制度はどのようなものなのか」「もっと社員の働き方に合った制度にできるのではないか」という点から、より社員のニーズを汲んだ育児制度の改訂に向け、「社員で作り上げる育児制度プロジェクト」を立ち上げました。
このプロジェクトは、育児中の社員100名超へのアンケートから始まりました。会社に対しての要望や育児の悩みを収集し、更には社員の配偶者にもアンケートに協力していただき、様々な角度から意見を出してもらいました。
次にアンケート結果をもとに、有志のプロジェクト参加メンバー28名との意見交換や制度のアイデア出しのワークショップを重ねました。こうして1年間のプロジェクトを経て、ピジョン社員のリアルな声が反映された新しい育児制度が完成したのです。


このプロジェクトの発起人となったのは、入社以来18年にわたり人事の仕事に携わってきた人事労務グループのマネージャーである渡辺雪香。自身も2児の母であり、2回の育休を経て復職した経験があります。
今回は渡辺のほか、プロジェクトに参加した鳥海純哉、市橋紀子からも「社員で作り上げる育児制度プロジェクト」についてお話をしていきます。
■実際に育児をする社員の声を聞いて制度を整えたい
 ー「社員で作り上げる育児制度プロジェクト」を立ち上げたきっかけについて教えてください。
渡辺:
もともとのピジョンの育児制度は整備されていて、利用率も非常に高いので、会社の制度としては充実したものだと思っていました。ただ、夫婦共働きや時短勤務・テレワークなど多様な働き方へのニーズが高まってきたこともあり、今の制度全体を更新する必要があるのではないかという問題意識が人事部の中にありました。さらに、今回育児・介護休業法の法改正があったタイミングだったので、改めて育児制度を見直すことになったのが始まりです。
普段、制度設計を考えるときは、人事担当者がメインとなって法律と世の中の流れと社員の状況を考えながら立案していくことが多いのですが、実際に制度を使うのは社員なのに、作るのは人事というのは、そもそもどうなのかなという気持ちがあって。制度を作るのだったら、社員の声を聞きながら作ったほうが利用しやすい制度になるだろうし、社員も制度に愛着がわくだろうという思いから、社員みんなで考えよう、とパパママ社員に声をかけたのがきっかけです。
■育児はずっと続くから、休暇だけではなく毎日の働き方の改善を
 ー育児制度についてのアンケートではどのような声が多かったですか?
渡辺:
女性社員は、育休制度に対しては満足しているという意見が多かった一方で、休暇制度よりも、日々仕事と家庭を両立していくためにもっと働きやすくなってほしいという意見が多く出ていました。具体的に言いますと、復職後の時短制度の仕組みや復職後の休暇についての要望ですね。
また、『男性がもっと育児に参加すればいいのに』や『男性が当たり前に使える制度を考えてほしい』という意見もたくさん出ていました。
実は、男性社員の配偶者の方にもアンケートにご協力いただいたのですが、男性社員とその配偶者からの意見として多かったのは、『1ヶ月育休が取れる“ひとつきいっしょ”の制度にとても満足している』という声でした。その一方で、『どちらかというと育児休暇をもっと長く、というよりも、普段の働き方を考えてほしい』という声や『時間外勤務がなく定時で退社できる雰囲気作りをしてほしい』という要望のほうが多かったですね。
■育児をしている人だけを優遇する制度ではいけない
 ー要望を制度に落としこんでいく際、どのような点で苦労しましたか?
渡辺:
色々な要望は出ましたが、会社としてすべての要望を採用するのは難しいので、意見を取捨選択する際は苦労しました。例えば、お金のサポート(お祝い金の支給等)を増やしてほしいという声は多くあがりました。でも、育児をしている人だけを金銭的に優遇するわけにはいかないので、そのような社員全体から見たバランスを考えるは難しかったです。
育児をする社員だけでなく、社員みんなが働きやすいと感じられる会社にするのがゴールだと思って、今回も制度を設計しました。
ただ、制度を作る上でもちろん大変だったこともありましたが、“苦労したな”というよりも、“楽しかった”という気持ちが強いです。プロジェクトに参加してくれた社員それぞれの家庭での育児の話を聞いて、本当に家庭ごとに育児スタイルがまったく違うということを知ることができました。とても楽しくて意義のある1年でした。
■ピジョンの一員であるからこそ
ーお2人はなぜ今回のプロジェクトに参加しようと思ったのですか?
鳥海:
僕は、部署が介護事業の仕事だから普段ベビー関係の業務に関わることが少ないので、ピジョンという会社にいる以上、ベビーに関して自分ができることで何か貢献したい、と思ったことがきっかけです。


市橋:
ピジョンは自分の経験が活きる会社だと思っているんです。私自身が働きながら育児を経験する中で、会社の人たちにすごくサポートをしてもらいました。なので今度は、私が後輩のママパパ社員のサポーターになれたらいいな、と思い参加しました。
 ープロジェクトに参加してみて、どのようなことを感じましたか?
鳥海:
他の社員の家庭の育児についての話を深く聞いたことがなかったので、ワークショップに参加することで自分と同じような悩みを抱えている人や、逆に自分では感じていなかった悩みを持っている人がいること、家族間の育児についての想いなどを知ることができたのは、今回参加したからこそ得られた経験だと思います。


市橋:
ワークショップでは、オンラインで名古屋や福岡の営業所など、物理的に離れていても、他の事業所所属のメンバーとも繋がることができました。勤務地域によっても悩みが違うことや、もちろん家族構成によっても悩んでいることや要望が全然違う、ということを知れたのは良かったですね。
■旧制度も充実はしていたけど、改訂してさらにフレキシブルに
 ー改訂以前の育児制度には、どのような改善点があると思っていましたか?
鳥海:
僕は子どもが3人いるんですが、1人目のときは仕事の環境的に“ひとつきいっしょ”が取れなくて。2人目・3人目のときは人事や上司が取れるように働きかけてくれるなど、取りやすい風土ができていたことで、育休を取ることができました。ただ、それでも少し難しいと感じる部分はあったので、今後はさらに風土と制度が両輪となって上手く回っていってほしい、と思っていました。


市橋:
旧制度も充実はしていたのですが、もうちょっと柔軟性が高ければいいのに、と感じる部分はありました。今回の制度改訂で時間休が取れるようになったり、PTAの活動や学校行事で休みを取れる期間が小学校までだったのを中学校までに延ばしてもらえたりと、社員のいろいろな声を取り入れてもらえたのはとても嬉しかったですね。


渡辺:
ひとつの事例をご紹介しますと、改訂前の時短勤務制度は、フレックスタイム制度との併用は認められておらず、各々が申請した短縮勤務の就業時間帯でしか業務が出来ませんでした。でも実は私のところに時短勤務利用者から、「時短勤務を利用しながら柔軟に始業・終業が変えられるようにフレックスタイム制度も使えるようにしてもらえないか」という声が以前からたくさん届いていました。実際に自分が勤務していても不便だなと感じていたものの、従来は制度設計上、併用が難しく断念していましたが、今回は一歩踏み込んで、元々のフレックスタイム制度自体を変えることから考えたので、時短勤務とフレックスタイム制度の併用を可能にしました。
■運用の開始直後に妊娠報告や喜びの声が!
 ー運用を開始して2ヶ月経ちました。社員からはどのような声が届いていますか?
渡辺:
新制度を社内周知してすぐに、男性社員から配偶者の妊娠報告が数件ありました。ピジョンは早い時期からの妊娠報告を推奨していて、早期から色々なサポート体制が整っているよ、ということを社員へお知らせしたので、新しい制度を利用したいという声があがりました。
女性社員からも“すごく働きやすくなった、ありがとう”という声が複数届きました。さらに、若い社員からも“とても素敵な取り組みですね!”というようなメールをもらったりして、このプロジェクトを進めた甲斐があったと思えましたね。
■子どもに関わる時間が制度としてあるからこそ、楽しく大切に利用してほしい
 ー実際にご自身で育児制度を利用してみての気付きや、これから制度を利用する人たちに伝えたいことはありますか?
鳥海:
当社の“ひとつきいっしょ”の育児休職を取得したことで、"遊んだり、ミルクをあげたり、子どもに何かをするだけが育児ではない"という気付きがありました。掃除など日常的に行なう家事の役割分担が明確化されたというのは大きな進展でしたね。
法整備もそうですし、社内制度としても育児に参加できる時間があり、家族と育児のワンシーンを体感出来る機会なので、せっかくだから楽しんで使ってほしいなと思います。当社の場合、男性に会社から与えられた育休自体は1ヶ月という限られた期間ですが、だからこそ、大切に過ごしてほしいです。


市橋:
ピジョン社員なので、仕事柄育児について知っているつもりではいたのですが、実際に子育てをしてみると想像以上に大変でしたね。実体験をしてみるとこんなに違うのかと。
使える制度はしっかり利用して、その時にしかない育児の時間を体験してほしいですね。


渡辺:
子どもは母親だけが育てるわけではないんですよね。子どもは家族で育てるべきで、家族でありたい姿を想像しながら共に育児をしてほしいです。1人で抱え込まずに役割分担をして、楽しいときも大変な時も共有できることが大切だと思います。
■“育児用品の会社だから”とは思われたくない。
男性も女性も仕事と家庭を両立しながら働きやすい社会に
従来の育児制度も、今まで取得率を100%にしてきた運用の部分も、決して初めから順調に出来ていたわけではなく、世の中の企業と同じように失敗を繰り返し、紆余曲折を経て今に至り、今回の新しい育児制度の設計につながりました。「世の中からは“育児用品の会社だからできる ”と受け取られてしまうのかもしれないけれど、正直なところ15年程前のピジョンは他の企業とそう変わらず、失敗もたくさん経験してきたので、そうは思われたくない」と渡辺は語ります。
今回の「社員で作り上げる育児制度プロジェクト」を含めたピジョンの取り組みと、試行錯誤から蓄積されたナレッジを社会に共有することが、育児制度の設計や運用に悩んでいる世の中の企業の方々の手助けになり、育児に関わる企業の使命でもある、とピジョンは考えます。
働く女性も増え、働き方や育児スタイルが多様化している時代だからこそ、女性が仕事と家庭を両立しながら職場復帰するだけでなく、男性も当たり前に育児をできる社会にならなければいけません。
そのためには世の中の企業や職場が、社員・職員一人ひとりと真剣に向き合ってサポートしていけるよう、制度設計も企業風土づくりも大切だと考えます。今後も当社が取り組みを推進し、それを広く社会に共有することで、社会全体が育児をしやすい環境へと変わると考えております。






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ピジョン株式会社 人事・労務グループ (kikaku@pigeon.com)

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