ノーマルで300km/hを記録する市販車も! 日本屈指の国際サーキットの走り方をレーシングドライバーが伝授

2022.05.29 17:30
この記事をまとめると
■富士スピードウェイは1.5kmのストレートをもつ国際格式のサーキット
■市販車でもハイパワーなクルマは300km/hを超える
■レーシングドライバーの中谷明彦さんが各コーナーの走り方を伝える
数々の伝説を目撃した日本屈指の高速コース!
  サーキット走行の一丁目一番地は「富士スピードウェイ(FSW)」だ。日本の象徴とも言えるシンボリックな富士山が眼前に展開する大パノラマの景観のなかで走る気分は格別だ。
  一周4.5kmの国際格式による本格的なサーキットで、F1GPを初め数多くの名レースを開催してきた。
  最大の特徴は1.5kmに及ぶ国内最長のストレートがあり、近年の超高性能ハイパフォーマンスカーの性能をフルに引き出せるのは富士スピードウェイしかないと言っても過言ではないだろう。ナンバー付き量産モデルでも300km/hの最高速を引き出せる唯一の高速サーキットなのだ。
  では各コーナーのポイントを解説していこう。
  まず第1コーナー(TGRコーナーと呼称されている)。長い直線で最高速に達したクルマを減速させ、正しいアプローチラインと旋回速度に合わせるのはプロドライバーにとっても難しい。1コーナー自体は半径27Rと小さく。旋回速度は速いレーシングマシンでも100km/h以下。ノーマルカーなら60〜80km/hで旋回する。問題は最高速が300km/h近くに達している場合、200km/h以上の減速を求められる。
  最高速が速ければ速いほど減速量が大きく、ブレーキングとシフトダウン変速が難しい。また急減速Gにより車体に大きなピッチングモーメントが加わり、後輪の荷重が減少して接地性が低下し前輪荷重が大きくなる。その結果、前輪ブレーキに大きな負担がかかるだけでなく、車体姿勢も不安定になりやすい。
  速度リミッター付の国産車なら減速は100km/h弱だから制御しやすいが、スーパーカークラスはレーシングカーよりコントロールが難しいのだ。
  1コーナーアプローチ区間にはコース左サイドに250m、200m、150m、100m、50mと1コーナーまでの距離を示す看板表示があり、ノーマルカーなら250m手前からブレーキングを開始しなければならない。ダウンフォースの効いたスリックタイヤのレーシングカーなら100mからのブレーキングで間に合うが、スポーツラジアルタイヤのスーパーカーで300km/h近く出ていたら250mからでも間に合わない。その手前300mほどでアクセルオフして加速Gを無くし、空気抵抗で減速を初めて300mでブレーキを踏み始めるといったプロセスが必要になってくる。しかも周回を重ねるとブレーキ温度が高くなってフェードしやすく、300mでも間に合わなくなるなど変化が激しく現れるので最大限の注意が必要だ。
  1コーナーのアプローチラインはクリッピングポイントが下っていて視認し難い。下りエリアに入った途端に前輪荷重が抜けてステアリング応答が低下するので切り増ししなければならず、見た目以上に難しいコーナーとなっている。
  2コーナーは75Rで直線的に通過。
  続く3コーナー(コカコーラコーナー)は左80Rコーナーで難所としても知られる。クリッピングポイントを頂点としてコーナー出口が下っていてラインを視認できない。車速も3速、120km/h以上と高速で旋回するのでコントロールが難しい。
  コーナー出口はランオフエリアが広く、失敗しても逃げる場所があるが、左サイドのイン側はガードレールが近く、スピンして「イン巻き」を起こすとクラッシュに繋がってしまう。
  続く4〜6コーナー(トヨペットコーナー)は105Rの入り口から100R、95Rへと長く繋がっている超高速複合コーナー。かつては100Rとしてもっとも攻めるのが難しいコーナーとして多くのレーシングドライバーにとってチャレンジングなコーナーとして知られた面影を色濃く残している。
  トヨペットコーナーもアウト側ランオフエリアは広く、安全性は向上しているが、イン側へのイン巻きは注意しなければならない。
  また6コーナーの出口は95Rと回り込み、低速のヘアピンコーナーである7コーナー(アドバンコーナー)へのアプローチする姿勢を安定させることが重要だ。ダウンフォースの効くフォーミュラカーならアクセル全開のまま抜けられるが、それ以外のマシンでは緻密なアクセルコントロールと正確なライン取りが求められるのだ。
  ヘアピンコーナーも旧コースのレイアウトを色濃く残している。30Rの低速コーナーだが、コース幅がワイドで、必ずしもクリッピングポイントを取らなくても、ややRを大きくライン取りすればタイムロスなくクリアできる。ヘアピン出口の速度が続く高速300Rへの初速となるので、ライン取りよりボトムスピードを高く維持することが重要となる。
後半は名物の登り区間が続く!
  300Rは120Rの入り口部と230Rのコーナー中間部を繋げた高速部分。ほぼ全開で抜けられるが、ウエットだと川が数本現れハイドロを起こしやすい。アウト側ランオフが広く、イン側はガードレールが迫っているのは同様で、ここでもアクシデントが多い。
  そして富士スピードウェイの特徴的な登り勾配区間であるセクター3へ続いていく。
  その入り口となる10コーナー(ダンロップコーナー)はかつて「シケイン」として設定された低速S字コーナーで、富士スピードウェイでもっとも標高の低い場所になる。高速300Rを駆け下りながら減速し、登り区間へとアプローチするのは荷重変化が激しく難しい。
  低速コーナーではダウンフォースも期待できないのでフォーミュラカーでもブレーキロックを引き起こしやすいのだ。GTカーなどABSやトラクションコントロールを装備していれば、極めて有効な効果を引き出せる。
  やや縁石をカット気味に、直線的に最短のラインを取り、ハンドル舵角を小さくして、トラクションをかけてスムースに加速。続く登り区間の13コーナーはブラインドコーナーで先が見えず、イン側が一段盛り上がって高くなっているのでライン取りが難しい。
  登り勾配がきつく、ステアリング操舵抵抗も大きいのでアクセルオフをすると減速してしまう。パーシャルアクセルコントロールを使い小さい操舵角でクリアするのが理想だ。レース後半にタイヤのグリップ力が低下してくると、もっとも影響を受け易い場所でもある。
  そして85R〜25Rと複合コーナーで構成された名物GRスープラコーナーへとアプローチしていく。25Rもブラインドで、先の路面が見辛くコースアウトやアクシデントが最も多い。一方、ミスなくクリアできれば最終コーナーへの加速が有利になり、タイムも向上する。
  最終コーナー(パナソニックコーナー)は75Rのアプローチから33Rへと小さく回り込んでいる。また登り勾配も強く、アクセルオフだけでも大きく減速する。ライン取りの自由度も高いが、最終コーナー脱出速度が最後の直線での速度の伸びに大きく影響するので、最高速を得るうえで重要なポイントとなる。
  そしてストレート。1.5km(1475m)の直線だ。標高約600mと空気が薄く、空気抵抗が少ないので過給器付エンジン搭載車であれば速度が伸びるがNA(自然吸気)エンジン車ではパワーが低下する。市販車ではスーパーカークラスで最高速300km/h弱が記録でき、レーシングカーでは350km/hに達するクラスもある。
  このように世界的にも名高く注目されている富士スピードウェイを走ることはドライバー冥利に尽きる。グランツーリスモなどドライビングシミュレーターなどでの再現性も高く、さまざまな練習方法を駆使して攻略してもらいたい。

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