見せ方を変えて未利用真珠を人気商品に ~「SEVEN THREE.」(セブンスリー)尾崎ななみさんインタビュー~

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2022.05.17 12:00
■はじめに
伊勢志摩産あこや真珠ブランドSEVEN THREE.(セブンスリー)は、これまで流通していなかった「ある形の真珠」の販売など、業界の常識を超えた新しい動きで注目を集めています。セブンスリーを展開する(株)サンブンノナナ代表の尾崎ななみさんに、真珠を取り巻く課題、ブランド運営の思いを伺いました。
1.真珠に携わるきっかけ 
――尾崎さんが真珠に携わりはじめたきっかけを教えてください。
祖父があこや真珠の養殖を70年続けています。真珠は身近な存在で育ちましたが、「祖父の仕事」であり、幼いころの私には養殖場は遊び場でした。
高校卒業後に上京し、モデル・タレント業の様々な仕事を経験して、次のステップに進む前の集大成に地元三重で活動がしたいと考えました。「地元でも活躍する姿を直接観たかった」という祖母の言葉がきっかけです。そこで伊勢市のPR活動ができるミス伊勢志摩に応募したところ、グランプリをいただきました(第58代目ミス伊勢志摩)。三重と東京を行き来するようになり、三重にいる時は祖父の仕事を学び始めたことがキッカケです。
――そこから真珠の事業に携わるようになったのですね。
はい。祖父は85歳の今も現役です。一年を通して、養殖の仕事はとても大変なことを知りました。高齢の祖父1人では限界もありますし、私にできることを考え、誕生した真珠のジュエリー加工・販売の担当を申し出ました。
2.見えてきた課題
――手伝いはじめて気づいたことがあったそうですね。
真珠を知らない人はほとんどいないと思います。では「真珠はどこで、どうやってできるのか? どのような種類があるのか?」と聞かれたらどうでしょうか。
――そう言われてみると、あやふやになりますね。
養殖の話をすると、真珠の背景を知らない方が多いことに気づきました。
そして、固定されたイメージが課題だと思いました。
――どんなイメージですか。
業界として「白くて丸い真珠が最高級」という見せ方が成功した反面、「真珠=白くて丸い」イメージだけが強くなりました。様々な色、カタチがあることが知られていないのです。
――たしかに真珠は白くて丸いのだけと思っている人は多いと思います。
市場にほとんど流通しないのですが、実は真円ではない歪なカタチや、グレー・ブルー・イエローゴールド・グラデーションなどの天然色の真珠があります。
3.新たな価値をつけた「いびつで丸くない真珠」
――なぜ他の真珠は流通されないのでしょうか。
色やカタチが違うと、一連ネックレスの数を作ることが難しいこと。そして、一点ものとなり多店舗で同一商品として取り扱うことができないため、大手企業ほど、同じ白くて丸い真珠を好まれます。
――いびつで丸くない真珠はどれくらいできるのですか。
大半が、真円・やや丸い形ですが、約1割は独特ないびつで丸くない真珠が生まれます。これらは取り引きの場にも出ない真珠なので、生産者の元に残ります。
私は祖父と選別作業をしていたときに、いびつなカタチが「尾びれがついた金魚」に見えてきて、「金魚ちゃん」「金魚真珠」と呼んでいました。
――たしかに、金魚のようにも見えます。
業界として「変形真珠」「バロックパール」といった一括りの呼び名はありますが、真珠の形に合わせて見立てをすることはありません。この選別作業中にアイディアが生まれ、名前をつけることで特別感と愛着が増すことから「金魚真珠」と命名し、商標登録しました。
4.時流に合ったストーリー
――「金魚真珠」と名前をつけて売り出し始めるのですね。
これまでだったら「カタチが違うこと」は否定されてしまうところ、いまの時代は「みんな同じじゃなくて、違っていい」という個性を大切にする流れがあります。
――たしかにそういう時流はありますね。
もう一つ、モノがあふれている時代、いびつで丸くない個性豊かな真珠たちは、まだ世に出ていなかった「新しいもの」でもあり価値があると考えています。
――そうですね、初めて知った私には「新しい」です。
さらに、その真珠が「誕生しても今まで使われていなかったもの」なら、サステナブルにもつながります。
――これからは、今までと同じ売り方では難しいかもしれませんね。
真珠の作り方のように変わらない伝統を守りつつ、時代の流れに応じて、視点を変えた新しい売り方は必要と感じていました。
――周りの方々の反応はどうでしたか?
金魚真珠のような名前をつけるアイデアは全く考えたことがなかったと聞きます。
白くて丸いものも、いびつで丸くないものも等しく3~4年かけてつくられます。一個一個同じように手間も愛情もかける生産者の努力を身近で見ているからこそ、未利用真珠を何とかしたいという気持ちが生まれ、今に繋がりました。
――そうなんですね。金魚真珠は作ろうと思ってできるものなのでしょうか?
母貝の中で核が動いて真珠層が横に広がったり、層が崩れて歪なカタチが誕生します。生産者も貝を開けて初めて分かる、作ろうと思っても出来ない、奇跡的なカタチです。
――買い手がつかなかった未利用真珠も、他の真珠と同じような価格にした理由は?
「規格外」は業界内で決めているだけです。いびつで丸くない真珠にも品質が良いものが沢山あります。カタチはあくまで好みであり、けして丸いものが一番良いとは限りません。奇跡的に誕生したカタチは希少です。買い手がつかなかった真珠もきちんとした値段で購入することで、生産者の応援にも繋がるため「安く仕入れ、低価格で売る」ことは初めから考えていなかったです。
K18素材を使用しジュエリー展開に
――なるほど。価格競争ではなく、違う戦略をされたのですね。
ストーリーがある商品だからこそ、価格を下げて売りやすくするのではく、価値をしっかりと伝えることが大切だと思います。生産者をはじめとして関わる人達が無理をしない、みんなが幸せになれるものづくりをしていきたいです。
――工業製品のように規格化された真珠業界に、新たな切り口を生み出したように感じます。
5.ストーリーが関心を呼び、広がっていく
――お話を聞いていると、買いたくなるストーリーづくりが緻密ですごいと感じます。
私たちの扱うものは「伝えないと売れない商品」です。一人ひとりに伝えるのは大変ですが、様々なメディアで取り上げていただき、多くの方に広がりました。そして、商品を買ってくださったお客様が身につけて、「その真珠はどうなっているの?」と話題に上がるとお聞きしています。
――メディアではどのように取り上げられていますか。
金魚真珠は「アイデア一つでこんなに見え方が変わる」という事例として取り上げられることが多いです。例えばテレビの場合は「この商品はなんでヒットしたのでしょうか?」と、クイズ形式に。雑誌では「ヒットするネーミング」の特集で取り上げていただくこともあります。
6.お土産で買えない真珠
――真珠はどこの海でも作れるわけではない、とお聞きしました。
真珠はリアス海岸の波が穏やかで栄養分のある山が近くにある、海水温など条件のある場所で育ちます。日本では愛媛県の宇和島、長崎県の対馬壱岐、三重県の伊勢志摩でシェアの9割を占めています。
――産地は限られているのですね。
はい。しかし、真珠は見た目が重要視され、カタチや大きさ、品質などで選別し、産地は関係なく混ぜられてしまうのです。
私は気になって伊勢志摩の真珠屋さんを回りましたが、地元でも産地は重視されていなくて、とてもショックでした。
旅行で訪れたら、その土地の名産品が欲しくなることがありますよね。
これまでの常識では重要ではないかもしれません。しかし生産者の誇りも伝えたい。そこで「伊勢志摩の真珠」と産地を明記することにしました。
――伊勢志摩産の真珠っていいですね。
近くに伊勢神宮もあるのでパワーやエネルギーをもらえると言っていただきます。伊勢志摩の思い出として、私たちのところから購入いただく事もあります。品質はもちろん重要ですが、私は産地も大切にしていきたいです。
――真珠以外でも大事な視点だと思います。
日本は手仕事が多い国ですよね。
技術を守り現在、未来にも伝えていく。そして伝統工芸品から魅力あふれる地域づくりは可能。産地を示すことで生まれる価値はあると考えます。
7.市場を取り合うのではなく新たな市場を開拓
――メディアに取り上げられることで変わったことはありますか?
「これまで真珠に関心のなかった」方がストーリーに共感し、購入いただけることが増えました。自分自身で買うファーストパールの方も多く、とても嬉しいです。
――真珠に関心のなかった私も関心を持ち始めています(笑)。
真円より、個性的なカタチや色合いは性別を問わず使いやすく、普段着にも合うシンプルなデザインなので、「新しいお客様を呼び込むきっかけ」をつくることができました。
8.調色加工をしない新色ロゼ・ペルル
――金魚真珠以外にも、新しい見せ方をした商品が発表されたそうですね。
業界では珍しい、調色加工ではないピンク色のあこや真珠を発表しました。
――ピンク色ですか。
はい。一般的に流通しているピンク色のあこや真珠は、完成した真珠に後から調色加工をしています。
しかし、SEVEN THREE. では母貝に入れる核を通常の白ではなくピンク色に染めてから、貝に入れて育て、誕生した時からピンク色の真珠を作り出しました。2年前から祖父と実験を始め、試行錯誤しながら完成。「さくらの日」と名付けられた3月27日にお披露目しました。
この新色は「ロゼ・ペルル」と名付けました。フランス語でロゼは「バラ色」、ペルルは「真珠」を意味します。真珠の仕上がりを見て、ロゼシャンパンの色に見えたことから命名しました。調色加工とは違い、自然が作り出すピンクの色合いが少しずつ違い面白いです。
9. チャリティ支援にも。真珠を余すことなく様々な使い方でアプローチ。
――さらに新しい取り組みも発表されましたよね。
真珠の品質は厳しい選別をしているため、輝きが弱かったり、天然の傷が大きい真珠はジュエリーには使用しません。こうした真珠も、余すことなく世に出し、より多くの方に知ってもらうキッカケ作りとして、手軽に本物を楽しめるコードブレスレッドを提案してきました。
今回はご縁をいただき、歌手のMISIAさんによるエシカルショップ「MY CHOICE MY LIFE」とコラボし、チャリティ商品を制作しました。
紐の色をウクライナ国旗と同じ青と黄色にした2本のコードブレスレッドで、平和を願って紐を結ぶ、という意味をこめています。
一日も早く戦争が終結することを心より祈っています。
MCML× SEVEN THREE. 「伊勢志摩産あこや真珠コードブレスレット」 ウクライナ ver. ハンドメイドキット商品ページはこちら
※MCMLを運営するリズメディアグループと一般財団法人mudefの「ウクライナ支援プロジェクト」に寄付され、製作経費を除いた全額をウクライナの人々の人道支援に活用させていただきます。
まとめ
「白くて丸いのが真珠」というこれまでの常識から少し枠をはみ出して、いびつで丸くない未利用の真珠を提供する。考え抜かれた「今の時代に合った新しい売り方」は、これまで真珠に関心のなかった人たちをも魅了して新たな市場を開拓しています。

真珠に限らず様々な日本のモノづくり・伝統技術でも応用できるかもしれない、そんなストーリーが満載のインタビューでした。
尾崎さま、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

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