個人の成果に固執する前に、チームとしてのパフォーマンスを大切に

2021.02.19 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。2月19日の放送は、サッカー女子日本代表の長谷川唯さんが登場。試合に臨む上での信念、自身のプレースタイル、新たな挑戦などについて語った。
■自分の結果よりもチームの勝利が最優先
高校時代から強豪の日テレ・べレーザで活躍し、チームをリーグ5連覇に導いた長谷川さんは、日本代表の一員として挑んだワールドカップでもゴールを決めた。しかし、自分が得点した瞬間よりも、仲間をアシストしたときに喜びを感じるという。「自分がパスをしたり、動いたりしたことで、別の誰かが点を獲るほうが嬉しい。他にも、みんなで練習を重ねていたプレーを試合で発揮したり、ポジションの近い選手と“こうしたいね”と話していたことが実行できたりするのも楽しいですね。試合中は、見ている人が分からない細かいところで、けっこう喜んでいます」と明かした。
優先順位の一番はチームの勝利。それは、澤穂希さんや岩清水梓さんら、日テレ・ベレーザの先輩たちから引き継がれた“信念”でもある。「自分の調子が良くてもチームが勝てなかったら、まだ私のやっていないことが絶対にある。どんな状況でもチームが勝つために何ができるかを考えていますし、先輩にもそういう方が多いと思います。チームの勝利があっての個人の結果だと、先輩たちがプレーで示してくれました」。
若手から中堅になった長谷川さんも、先輩として次世代の選手に伝えたいことがある。それは、短所も長所になるということ。日本代表チームの平均身長が163cmなのに対し、長谷川さんの身長は157cmと小柄。それでも長谷川さんは「小さいからこそできることも多いので、不便を感じたことはありません。もちろんヘディングが苦手などのデメリットもありますけど、他を強くすることでマイナス部分は気にならなくなりました」と振り返る。
華麗なテクニックと巧みな駆け引きで相手選手を翻弄するのが、長谷川さんのプレースタイル。自身の特性を活かしながら、チームの勝利に貢献してきた。「もし体が大きかったら、このプレースタイルにはなっていませんし、今は小さくて良かったなという思いの方が強いです。テレビに出させていただく機会もありますが、言葉だけではなく、プレーでも次の世代に伝えていければと思っています」。
■嫌なことは、楽しいことで上書きする
メンタル面で意識しているのは、常に気持ちを“上書き”すること。長谷川さんは「うまくいかないことがあっても、友達とご飯を食べたり、遊んだり、楽しいことをしていると、どんどん上書きされていって、過去のことは気にならなくなります。私の周りには楽しいことが多いので、嫌なことがあっても引きずることはないですね」と話す。
長谷川さんの“楽しいこと”の一つは、趣味のボウリング。ベストスコアは243だという。「私は速さを求めるより、ゆっくりでも回転を意識して投げるタイプなので、サッカーのプレースタイルと似ているかもしれません。ただ、サッカーは試合時間が90分間と長いので、ミスをしても取り戻せる。また、チームスポーツなので仲間にもカバーしてもらえる。そこが、ボウリングとの違いだと思います」。
2021年はイタリアの強豪チーム・ACミランに所属することが決定。移籍を発表したのは自身の誕生日だった。24歳の新たなチャレンジに、長谷川さんは「日本でやってきたことが海外でどれだけ通用するのか、確かめたいと思っています。最終的にはUEFA女子チャンピオンズリーグ(女子クラブチームによる国際大会)に出たいですし、そのためのレベルアップもしていきたいですね」と意気込む。
フランスのオリンピック・リヨンに所属する熊谷紗希さんや、イングランドのアストン・ヴィラLFCに所属する岩渕真奈さんなど、海外で活躍する日本人選手との対決も楽しみだという。「日本人同士の対決が日本の皆さんにも伝わるような試合をしたいですし、それが海外での目標の一つでもあります」。
言葉などの不安もあるが、期待も膨らむ。長谷川さんは「サッカーに関することであれば、どんなところでも自分の意見をどんどん言えますし、思ったことや要望も全部伝えられます。好きなことだから頑張れるし、楽しめると思うんです。今までもそれができていたので、海外でも同じように楽しみながら活躍したいですね」と声を弾ませた。
次回2月26日の放送は、2月に登場した大竹風美子さん、藤川球児さん、長谷川唯さんが再登場。3人の「美学」を再び掘り下げる。