この社会、組織やチームはすべて「他人」との関わりから始まる

2020.11.27 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。11月27日の放送は、元アーティスティックスイミング日本代表の青木愛さん、元バレーボール女子日本代表の大友愛さん、元サッカー日本代表の藤田俊哉さんのエピソードをプレーバック。3人の輝きの秘密に迫った。
■目指していたものを思い返すことで、壁は乗り越えられる
1日15時間を超えることもある、練習の日々。日本代表チームの過酷な合宿について、青木さんは「すべてはオリンピックに出るため。メダルを獲るという夢があったから、しんどい練習も乗り越えられました」と振り返る。
また、人一倍負けず嫌いな性格も、夢に突き進むための原動力になった。「練習は嫌いでしたが、最後までやり切りました。なんで毎日こんな辛い思いをしなければいけないんだろうと思いながらプールに入っていました。でも、自分で決めたことを途中で止めたくなかったし、諦めたくなかった。死ぬまで負けず嫌いでいくと思います(笑)」。
壁にぶつかったときに思い浮かべるのは「初志貫徹」という言葉。青木さんは「客観的に自分を見て、いったい何のためにやっているのかということを、改めて見つめ直す。初めに目指していたものを思い返すと、壁って案外あっさりと乗り越えられるんです」と語った。
■“最高のチーム”の作り方
2012年のロンドンオリンピックで銅メダルに輝いた大友さん。「日本代表チームでバレーボールをしていた時間がすごく楽しかったんです。実は、オリンピックもメダルもそこまでの思い入れはなくて。そこに至るまでの練習から試合まで、チームのみんなと気持ちの詰まった時間を過ごせていたことが、なによりの思い出になっています」と笑顔を浮かべる。
眞鍋政義監督率いる“眞鍋ジャパン”は、当時の大友さんにとって、かけがえのないチームだった。「普通、監督って選手を自分の色に染めると思うんです。このチームはこういうスタイルだから、こうならなきゃいけないと。でも、眞鍋監督は、選手一人ずつに“お前はこういう立場だ”“お前にはこれを頼みたい”と伝えて、役割を与えるという指導だったので、すごくやりがいを感じました。たぶん、当時のメンバーで“私なんかチームにいなくても勝てる”と思っていた人は一人もいなくて、みんな自分の役割を把握して、勝つために一生懸命でした。“最高のチーム”って、きっとこういうことを言うんだな、と今でも思っています」。
そして、バレーボールを通じて、人と人とのつながりを強く実感するようになった。大友さんは「私が自分の人生の中で大切にしているのが“思いやり”という言葉。バレーボールも、仲間を思いやるスポーツなんですね。人を思いやることで、その人とつながることもできる。それは人として、すごく大切なことじゃないかなと思うんです」と強調した。
■すべての始まりは「他人」から
1994年にJリーグのジュビロ磐田に入団。チーム全盛期に背番号10を背負った藤田さんは、当時のメンバーと自分の役割について「ブラジル代表のキャプテン・ドゥンガと、日本を背負って立つ中山雅史という両巨塔がチームを牽引し、僕や名波浩がいて、その下に若い選手がいる。僕は、立ち位置的には中間管理職でしたね」と回想する。
個性の強いメンバーばかりだが、意外にも衝突することはなかったという。「結構、仲は良かったですよ。練習が終わってからもみんなで食事に行きました。僕や名波が“今日はどうします?”と聞くと、中山さんは必ず“行く”と言うんです。そうなるともう必然的に“みんなで行こうか!”となるのが、なんだかチームという感じでしたね」。
サッカーに40年近くも携わってきたことで気づいたこともある。藤田さんは「サッカーも他のスポーツも、それどころか学校や会社も、あまり違いはないと思ったんです。結局、全ては他人との関わりから始まるわけじゃないですか。他人から始まって、それがチームになり、家族になっていくわけですよね」と語る。
「まずは自分をストレートに出して、お互いに信じ合うことが大切だと思うんです。最初から信頼なんて生まれない。その作業の繰り返しで、理解を深めていく。会社組織でもそれは同じですよね」。選手、コーチを経験し、現在は日本サッカー協会の在海外強化部会員として、日本代表の強化を担う藤田さん。立場は変わっても、他人と関わる際に大切にしている信念は変わらない。
次回12月4日の放送は、元マラソン選手の市橋有里さんが登場する。