昨日の自分を超えるための「今日の学び15分」を1年続けると…

2020.10.16 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。10月16日の放送は、十種競技日本記録保持者の右代啓祐さんが登場。競技の魅力やおすすめのトレーニング方法、選手としての信条などを語った。
■昨日の自分を超える「今日」を繰り返す
日本選手権を8度制覇し、日本代表としてオリンピックに2度出場。今年で34歳になり、試合では最年長になることも多い右代さんだが「若い頃より怪我もしなくなったし、体力的な衰えはまったく感じていないです」と胸を張る。
十種競技は、パワーやスピードなど、さまざまな要素が求められる過酷な競技。1日目は100m、走り幅跳び、砲丸投げ、走り高跳び、400m、2日目は110mハードル、円盤投げ、棒高跳び、やり投げ、1500mと、2日間に渡って十種目の競技で競い合う。24歳で日本記録を打ち立てた右代さんは、競技の魅力について「蓄積されていくダメージをグッと押さえながら2日間を戦うので、終わった後の達成感が心地いいんです。筋肉痛が“こんなにも気持ちのいいものなんだ”と思えます」と語る。
通常の陸上競技はメダリストにしか許されていないが、十種競技の選手だけは、全員の選手にウイニングランが認められている。「試合が終わると、全員で上半身裸になって競技場を練り歩くんです。ちょっと特別な感じがあるので、競技だけではなく、そういうところも見てもらいたいですね」。
体脂肪率は現在5~6%。鋼のような肉体は過酷なトレーニングの賜物だ。特に重視しているのは腹筋。右代さんは「腹筋がしっかりしていないと、姿勢が悪くなるので、腹回りを固める運動は大事ですね。寝転がって肘と膝をタッチする腹筋は効果がありますよ。大きく振ったり、ひねったりする動きを加えてみてもいいと思います」と、おすすめの筋トレ方法を教えてくれた。
大切なのは、毎日の積み重ね。右代さんは、2011年から2年間ほど、十種競技の元日本チャンピオンで、現在はタレントとしても活躍している武井壮さんのコーチを受けていた。「武井さんからは“今日1日を自分史上最高の1日に”という言葉をいただきました。1日に30分でも15分でもいいから学びの時間を作ることで、今日の自分が、昨日の自分を超えてくる。それが習慣になれば、1年で大きく変わるということを教えてもらったんです。やり残しのないように1日1日を大事に過ごすっていうのは、今も心がけていますし、その言葉を胸に競技を続けています」。
■前に進むために、後ろは向かない
十種競技で致命傷になるのは、結果の悪かった種目を引きずってしまうこと。おのずと、切り替えの早さが求められる。右代さんは「その種目が終わったら、後戻りはできないので、まずは前に進むために後ろを向かないようにしています」と、試合中の心構えを語った。
気持ちを切り替えるために、感情を吐き出すこともあるという。「良い結果じゃなかったときはトイレに行って、タオルを口にあてて大声で叫んでしまうんです。それこそ泣くこともあります。思いっきり感情を表に出すと、パッと切り替わって次に進めるんです。僕、2歳と6歳の娘がいるんですけど、子供って楽しいときは思いっきり笑って、悲しいときは大声で泣くじゃないですか。それが本来の人間の姿なんだと気づいて、そこから自然と感情を出せるようになりました」。
東京オリンピックの延期が決まった際にも、すぐに前を向くことができた。右代さんは「スタートダッシュをすぐに切れるかどうかがすごく大事だと思っています。もちろん僕も延期には落ち込みましたけど、同時に、1年あれば何ができるかを考えて、次の日からは行動に移していました」と打ち明ける。
すでにベテランの域に達しているが、まだまだやれるという自負もある。「立ち幅跳びや筋力測定など、数値の下がっているものもありますが、過去の自分よりも記録が良くなっている種目もあるんですね。今が常に一番良い状態だと自分では思っています」。十種競技の勝者の称号「キング・オブ・アスリート」を手にするため、右代さんの挑戦はこれからも続いていく。
次回10月23日の放送は、トライアスロン選手の佐藤優香さんが登場する。