自分の“弱さ”を克服して“強さ”に変えることができる、唯一の存在

2020.10.09 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。10月9日の放送は、バドミントン女子シングルス銅メダリストの奥原希望さんが登場。日本バドミントン界隆盛の理由や、自身の強み、競技への取り組み方などを明かした。
■他人からのアドバイスは、自分を客観視するためのヒントになる
2016年、リオデジャネイロオリンピックで銅メダルを獲得した奥原さんは、翌年の世界選手権女子シングルスで優勝を果たし、2019年には世界ランキング1位に輝いた。現在、バドミントン界は奥原さんを筆頭に、日本人選手が席巻。小椋久美子さんと潮田玲子さんの“オグシオペア”や、末綱聡子さんと前田美順さんの“スエマエペア”の活躍をジュニア時代から見てきた奥原さんは「頑張れば優勝できる、努力すれば目標を達成できるというのを先輩たちが示してくださったので、私たちの世代は世界で勝つことが特別すごいという認識はあまりないんです。世界で勝つことが当たり前だし、そうならなきゃいけないという空気感はありますね」と話す。
世界の頂点にまで上り詰めた奥原さんだが、驕りやうぬぼれは一切ない。「いろんな方がアドバイスをしてくれますが、まずは一回、全部受け入れるんです。その上で“この人は私のことをこう見ているんだ”とか、“そういう見方もあるんだ”とか、自分を客観視するためのヒントにしています。もちろん主観も大事にしながらですけど」。
現状を俯瞰で見ながら、何を優先させるべきかを常に考えてきたという奥原さんは「私の強みは“頭”だと思っています。目標を決めたら、そこから逆算して最初に取り掛かることを考えます」と語った。山積みの課題の中からやることを選んで、プランを立てていく。「順序も大事ですし、理解力も必要になってくる。全部自分で考えてやるということは、行動力を試されているということでもあります」。
目標を達成したときの“ご褒美”は、大好きなスイーツ。アスリートにしては珍しく、食事はあまり気にしないのだとか。「食べたいものを食べていますね。例えば、“明日、あれを食べたい”と思ったら、小さな目標を設定して、そこに向かって頑張ったから“食べてよし!”みたいな。言い訳というか、食べる名目を作るんです(笑)」。
■自分の“弱さ”を“強さ”に変えることができるのは、自分だけ
次なる目標は、東京オリンピックでのメダル獲得。奥原さんは「この1年で絶対にパワーアップできたと思っていますし、すごく楽しみです。リオでは銅メダルで悔しい思いをしたので、その悔しさを背負って、ありのままの自分を表現したいです」と闘志を燃やす。
ランキングトップ10の選手たちの平均身長が168cmなのに対して、奥原さんは156cmと小柄だが、それすらも強みに変えていく。「昔はもっと身長が高ければいいなと思ったことはありますけど、結局これが私だし、短所は長所でもあると思っています。背が低いからこそ、脚を上手く使えば、シャトルの下に潜り込んで打つことができる。そんなふうに短所を武器に変えて戦っていかないと、世界では絶対に勝てません。自分の全てを“良さ”と捉えて、そこをどう利用していくかが大事なんです」。
他人と違うことを気にし、周りに合わせてばかりの人たちに言いたいことがある。それは、世界を相手に自ら考え、戦ってきたからこその言葉。奥原さんは「今の日本は人に合わせる人がすごく多いじゃないですか。“周りがそう言うなら私も……”と。私はそれがすごく嫌で、みんな違っているのが当たり前で、その違いが良さであり、魅力だと思うんです。そのことに気づいて、前に出て勝負していってほしい。そうじゃなきゃもったいないと思っちゃうんですよね」と言葉に力を込める。
自分の弱さを克服して、強さへと変えることができるのは、自分だけだ。「これから先も自分とはずっと付き合っていくしかないわけですから。それなら自分自身を好きになるしかない。そうすれば、そんな自分を好きになってくれる人も絶対に現れると思います」。
これまで多くの人に出会い、支えられてもらったという自覚もある。奥原さんは「出会うべくして出会った人というのは確かにいて、そういう人との出会いは運命だし、縁だと思います。“ここぞ!”という時に出会う人とかもいますしね。私、そういう引きの強さはあるんです」と笑った。
次回10月16日の放送は、陸上競技選手の右代啓祐さんが登場する。