自身の役割を果たし、泣き笑いできるような「最後」を迎えたい

2020.09.18 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。9月18日の放送は、バレーボール女子日本代表の主将・荒木絵里香さんが登場。延期となった東京オリンピックに対する思い、代名詞ともいえるブロック、選手としての引き際などについて語った。
■現状を受け入れ、今できる最善を尽くすだけ
2008年の北京、2012年のロンドン、2016年のリオデジャネイロと、これまで3度のオリンピックを経験。女子バレーボール日本代表の中心選手として活躍してきた荒木さんは「キャリアを重ねてきて、バレーボール選手としての終盤を迎えつつあると思っています」と話す。
東京オリンピックの1年延期については「ちょっと混乱しました。この夏をターゲットに練習をしてきたので」と正直な気持ちを吐露。日の丸を背負って17年、現在36歳の荒木さんにとっては、特別な夏になる予定だった。「実は東京オリンピックが終わったら、バレーボールを辞めようと考えていました。家族のこと、娘のことを考えたら、いいタイミングだと思ったんです」。
延期によって、バレーボールだけではなく、全ての競技がいったんリセット。荒木さんは「自分ではどうしようもないことだから、受け入れるしかない。1年延期になったからといって“余裕ができた”と考えるのも違うと思いますけど、必要以上にネガティブになることはないのかなって。今できる最善を尽くしていくだけです」と心境を明かした。
気持ちを切り替え、2021年を目指す。もちろん、このままでは辞められないという思いもある。「母に“もう辞めてもいいんじゃない”と言われたときに“いや、辞められない!”と返した自分にハッとしました。キャプテンとしての使命も感じるし、自分が責任を持って頑張りたいと強く思っています」。
■バレーボール人生をまっとうしたい
そんな荒木さんの代名詞ともいえるのがブロック。19歳で日本代表に初選出されて以降、様々な場面で相手の攻撃を防いできた。「私がプレーの中で本当にこだわり、極めたいと思っているのは、ブロックです。相手のスパイクを決めさせないことが最重要課題なので、いかに後のディフェンスと連携が取れるかを考えながらプレーしています。スカッと気持ちの良いブロックができることはほとんど無いんですけど、それができたときは最高ですね」。
体力の衰えを補い、さらなる進化を求める毎日。現在のトレーニング方法について、荒木さんは「負荷をかけて筋肉を増やしていくことよりも、プレーに直結できるやり方を重視しています。軽く、早く、最高地点までジャンプするにはどうしたらいいかとか、動きを考えながら鍛えているんです。細かいところでまだ良くなる要素があると感じているので」と語った。
2013年に結婚した荒木さんは、翌年に第一子となる長女を出産。厳しい練習やハードな試合の合間、子どもとの時間は癒やしのひとときだ。しかし、荒木さんは「娘からは“バレーボールを辞めてほしい”とずっと言われています」と悩みを口にする。
胸に刺さる小学1年生の娘からの言葉。「ママには夢と目標があって、そこに向かって挑戦し、チャレンジしている。それをやり切りたい、やり遂げたいっていうのを伝えてはいるんです。でも、娘にしてみれば、そんなことよりもママと一緒に居たいという気持ちの方が圧倒的に強いのは当たり前なんですよね……」。
理解してもらえないことは分かっているが、それでもやらなければならないことがある。荒木さんは「自分の役割の大きさもありますし、バレーボール人生をまっとうしたいという思いも強い。最後に、チームのみんなで泣き笑いして終わりにしたい。メダルを獲って、泣き笑いしたいんです」と言葉に力を込めた。
次回9月25日の放送は、9月に登場した、中川聴乃さん、富樫勇樹さん、荒木絵里香さんが再登場。3人の「美学」を再び掘り下げる。