ウィークポイントを前向きに捉えた時、「負ける」という感覚は無くなっていく

2020.09.11 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。9月11日の放送は、バスケットボール選手の富樫勇樹さんが登場。アメリカ留学で学んだことや、好きなことへの向き合い方、ポジティブな性格の源などについて語った。
■ウィークポイントを前向きに捉えれば「負けた」という感覚はなくなる
Bリーグ(男子プロバスケットボールリーグ)・千葉ジェッツふなばしで活躍する富樫さんにとって、2019年は特別な年となった。司令塔としてチームを3年連続の日本一に導くと共に、自身はMVPを獲得。さらに、27歳にして、日本バスケットボール界初の1億円プレーヤーに。
バスケットボールに目覚めたのは、小学生のとき。中学を卒業すると同時に単身アメリカへと渡り、3年間を過ごす。留学について富樫さんは「すべてが上手くいったわけでもないし、自分のプレーもさせてもらえず、決して楽しかったわけではないんですけど、それでも自分の人生を大きく変えた濃い3年間だったと思います」と振り返る。
ポジションはポイントガードで、身長は167cm。バスケットボールにおいて身長の低さはデメリットとなるが、富樫さんにとっては大きな問題ではなかった。「自分の中ではそもそもハンデがあってやっていることなので、同じポジションの185cmの選手に競り負けても、負けたという感覚はありません。身長を言い訳にしている部分が半分と、もう半分は、ある意味では開き直って、自信を持ってやっているからでしょうね」。
そう思えるようになったのは、留学1年目のこと。日本ではエースとして注目を集める存在だったが、本場アメリカでは自分のスタイルが通用しないことも多かった。富樫さんは「日本では常にそのチームで一番のプレーヤーでしたから、シュートだって好き勝手にいくらでも打てたんですけど、アメリカではそうはいかなかった。コートに出ている5人の中の5番手で、1試合で1本もシュートを打てなかったこともありました」と述懐する。
それでも腐ることなく、果敢に攻め続けた結果、ある思いに至った。「最初は試合に出ても何もできないんじゃないかという思いは確かにありました。でも、1年目の最後のほうから、吹っ切れたんです。もう、体のサイズで負けるのはしょうがないって。そこから何をしていくかだと。だんだんとウィークポイントを前向きに捉えられるようになったんです」。
■死ぬこと以外は、もう何も怖くない
Bリーグを盛り上げ、さらに日本代表チームを牽引する富樫さんにとって、最大の武器はそのポジティブさ。これまで、幾多の試練があったが、「壁を乗り越えた」という実感はないのだとか。「本当にポジティブな性格をしていると思います。そこは唯一くらい、自分の良いところだなって。あまり悩んだり、迷ったりすることがない。結局、何を選んでも、自分が選んだことであれば自分が責任を持つわけですし」。
とにかく思い立ったらやってみるのが富樫流。プライベートでは、ビリヤードやSUP(スタンドアップパドル・サーフィン)、ヨガなどにハマっている。「やってみたいことって、そんなに多くないじゃないですか。だから、そう思えるものに出会えたときには、全力で挑戦してみたい。それはスポーツじゃなくても、何でもです」。
もし、もう一度海外への思いが強くなったとしたら、迷わず日本を飛び出るという。富樫さんは「人生は一度きりだと思うので、その瞬間の自分の気持ちを大事にしたいんです」と語る。
試合でも、自分を信じて全力プレー。富樫さんに「妥協」の二文字はない。
「子どもの頃、一度は“死”について考えるじゃないですか。いまだにそうなんですけど、死ぬことが怖くて仕方がないんです。怖すぎて、もう他のことは何も怖くない。そういう感覚はあるかもしれません。だから、試合で緊張することもないし、思い切ったプレーもできるんだと思います」。自分の本心に対して素直に、悔いのないように行動する。それが富樫さんの信念であり、生き方でもある。
次回、9月18日の放送は、女子バレーボールの荒木絵里香さんが登場する。