世代交代の波が来ても、ゆるぎなく全力を出すために

2020.07.31 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。7月31日の放送は、女子プロゴルファーの上田桃子さんが登場。「引退」について思うこと、ゴルフの魅力、コロナ禍で考えたことなどを語った。
■毎回、これが最後かもしれないと思うようにする
現在、女子プロゴルフ界は世代交代のさなか。20歳前後の黄金世代が大躍進している一方で、去っていくベテラン選手も少なくない。上田さんは「ずっと一緒に戦ってきた仲間がだんだんといなくなるのは、少しずつ寂しさが上乗せされていく感じですね」と心境を明かす。
今年で34歳になった上田さんも、引き際を意識せずにはいられない。「どんな辞め方なら悔いを残さないのだろうかと、常に自問自答しています。でも、引退を考えることによって、頑張れる部分もあるんです。年齢的なことからツアーではペース配分を考えてしまいがちになるんですけど、あまり力を抑えすぎても勝てません。MAXの力で挑むために、毎回、これが最後かもしれないと思うようにしています」。
100%の力で迎え撃つのは、勢いのある若手選手たち。上田さんは「若い子たちの新しい情熱に触れると“まだまだ負けないよ”という気持ちにさせてもらえます。体力の回復などは遅くなっていると思うんですけど、他のところで補って勝負したい。後退しているかもしれないけど、進化もしているんです」と笑顔を浮かべる。2007年に史上最年少で賞金女王に輝いた上田さんは、昨年も2勝を挙げるなど、いまだに第一線で活躍中。その礎となったのは、2008年のアメリカツアーへの挑戦だった。「日本ツアーでは感じなかったことを感じられるようになったし、海外での6年間は、自分の基盤になっていると思います」。
■プロとして、笑顔を振りまくよりも“準備”や“意気込み”を見せたい
経験を積み、年齢を重ね、教わる立場から伝える立場に。コロナ禍で、ゴルフの魅力を発信することについても考えたという。今シーズン、開催された女子ツアーは1大会のみ。上田さんはツアー開催を望むファンの声を受け、「ゴルフのおかげで人生が豊かになる人たちがいる。ならば今こそ、ゴルフの魅力を発信するべきタイミングではないかと思いました」と語る。
ギャラリーに届けたいのは、ゴルフをしている自分のリアルな姿。「“楽しさ”や“笑顔”よりも、私は最初の1打に至るまでの準備や、試合への意気込みなど、自分の“リアル”を感じてもらいたいですね。そのときのベストを表現することが、私らしさを見せることになるんです」。
ジュニア選手の頃から、多くのプロフゴルファーの“リアル”を間近で見てきた上田さんは「生意気に見えてしまっている部分はあると思うんですけど」と前置きしつつ、「とにかく“かっこいい”というのがプロゴルファーに対しての第一印象でした。それからは、なるべく自分もプロっぽく振る舞うようにしています」と続けた。その凛とした姿は多くのファンを惹きつけ、後輩の目標であり続けている。
プロの世界で15年以上戦い続けてきた上田さんだが、まだ知りたいこと、やりたいことはたくさんあるという。「1位になりたいという気持ちは毎年変わらないですし、結果以外の魅力も追求していきたい。私は、ゴルフのことが未だに全然分からなくて、もっと深く知りたい。もちろんまだまだ成長したいし、どこまで続けられるかチャレンジもしたい。欲張りですかね」と笑う。
上田さんにとっては、自身の成長も、試合の結果も、競技の魅力も、全て同じ道の上にあるもの。それら追い求めながら、日本を代表する女子プロゴルファーとして進化を続けていく。
次回、8月7日の放送は、競泳元日本代表の伊藤華英さんが登場する。