やりたいことが見つかったら「できるか」「できないか」は考えない

2020.06.05 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。6月5日の放送は、「トップアスリートたちの美学」と題して、元サッカー日本代表の中澤佑二さんと、なでしこジャパン主将の熊谷紗希さんが、リモートでクロストーク。ステイホーム期間中の過ごし方や、チームをまとめる方法、引退後の動向などについて語った。
■リスペクトできる選手がいると、チームは一つにまとまる
中澤さんは日本代表として110試合に出場し、2019年1月に引退。熊谷さんはサッカー女子日本代表・なでしこジャパンとして112試合に出場、現在はフランスの女子サッカーリーグの強豪であるオリンピック・リヨンに所属している。
意外にも初対面のふたりが、ステイホーム期間中の過ごし方を報告。中澤さんは愛犬の写真を掲げ、「もう犬と1日中、一緒にいます。現役時代はなかなかゆったりとした時間が持てなかったので」と笑う。一方、自炊する時間が増えたという熊谷さんは、最近作った料理を紹介。また、シーズンの途中でリーグ戦の中止が決定してからは、クラブの組んだメニューに沿って毎日のようにフィジカルトレーニングに励んでいるという。
熊谷さんは満足に練習ができない悔しさをにじませつつも、「それぞれ自宅で何セットやれたかとか、どのくらいの時間で出来たかとか、チームメイト同士で競い合うんですよ。みんな本気だから大変なんです(笑)」と、家でのトレーニングを精一杯エンジョイしていた。
26歳の熊谷さんは、平均年齢24歳のなでしこジャパンを牽引する立場にある。日本代表のキャプテンを務めた経験もある中澤さんは、熊谷さんにチームのまとめ方を聞かれ、「放し飼いじゃないですけど、若い子はある程度自由に遊ばせながら、それを尻拭いできるベテランがいるとチームは上手くまとまると思うんです。どんなに個性の強いプレイヤーでも、リスペクトしている選手の一言には納得しますから」と助言。熊谷さんも「そうなれるように頑張ります」と意気込んだ。
■「できるか、できないか」ではなく「やるか、やらないか」で考える
日本のサッカー界を盛り上げてきた中澤さんが引退を決意したのは、2018年のこと。左膝を手術し、連続フル出場の記録が178試合でストップしてしまう。「もう来年は厳しいかもと思っていましたね。手術をしてから、自分の中である程度気持ちが固まっていきました」。
引退後、第2の人生に選んだのはサッカーではなく、ラクロスだった。現在、中澤さんは日本体育大学の女子ラクロス部のコーチとして生徒の指導にあたっている。「もともと子供がラクロスをやっていて、あるとき、“本気でやりたい”と言われたんです。それなら親父も本気でやろうと。子供が適当にやっていたら、たぶんこの道には進んでいないですね」。
そんな中澤さんに、熊谷さんは「次の目標ってすぐに見つかりましたか?」という質問をぶつける。まだ引退は考えてないが、なでしこジャパンの最年長選手として、次のステップに進んだ“先輩”の経験が聞きたい。中澤さんは「僕も現役のときは引退後のことはまったく考えていませんでした。周りからも、自然と次にやりたいことが見つかると言われてきた。そして、本当にすぐ見つかった。たぶん、今やっていることがすべて繋がっていくと思うので、あまり気にしなくてもいいのかなと思います」とアドバイスを送る。
中澤さんはさらに、「新しく何かにチャレンジするときは、“できるか、できないか”じゃなくて、“やるか、やらないか”で考えると良いと思います。やってみたその先に生まれるものってきっとある気がするから。たとえそれで失敗しても、もう一回立ち止まって考えてみればいいんです」と続けた。
やりたいことを、心のままにやってみる。失敗も恐れない。熊谷さんは、そんな中澤さんの言葉に大きく頷いた。熊谷さんが“今やりたいこと”は、やはりサッカーだ。「大好きなサッカーをまた楽しめるように、今を過ごせたらと思っています」。新しい一歩を踏み出した中澤さんと、サッカーに専念する熊谷さん。日本サッカー界を代表するふたりのディフェンダーは、確固たる信念でそれぞれの道を突き進む。
6月12日の放送は、日本の陸上界からトップアスリートが登場。100m元日本記録保持者の朝原宣治さんと、100mハードルロンドン五輪代表の木村文子さんが、クロストークを繰り広げる。