常に先をゆく「ライバル」の存在が自分のレベルを引き上げてくれる

2020.04.10 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。4月10日の放送は、メジャーリーガーの前田健太さんと田中将大さんが登場。共に31歳、「健太」「将大」と呼び合う仲。今シーズンからは同じア・リーグの投手として戦う二人が、互いについて語り合った。
■初めて“ライバル”と呼ぶことができた瞬間
今年からミネソタ・ツインズに移籍した前田さんと、ニューヨーク・ヤンキースに所属して7年目を迎えた田中さん。日本プロ野球界でも名を馳せた二人だが、実はこれまでに一度も対戦経験がない。前田さんは、同じフロリダでキャンプ中の田中さんに、「今年からア・リーグに移籍しました。まだ人生で一回も投げ合っていないので、楽しみにしています」とビデオレターでメッセージを送った。
日米を通じて、初めての同リーグ。田中さんも「地区は違いますけど、今までのプロ野球人生の中で一番投げあう確率は高いですよね」と、前田さんのメッセージを受け止めた。
ライバルとして比較され続けてきた二人の出会いは中学時代。共に小学生のときに野球を始め、ボーイズリーグで活躍した。前田さんは日本選抜として世界大会に出場し、優勝にも貢献。田中さんは「僕は全国大会でボールボーイをしていたんですけど、その試合で健太が投げているところを見ていて。“先に行ってしまった”と思っていました」と当時を振り返る。
高校野球でも前田さんが一歩リード。中学卒業後に名門のPL学園へ進学した前田さんは、1年目の夏に甲子園の土を踏む。しかし、前田さんは、田中さんについて「将大を抜いたと思ったことは一度もないですし、ずっと先を走っている存在だと思います」と語る。前田さんに遅れること1年、田中さんは2年目でベンチ入りを果たし、駒大苫小牧のエースとして夏の甲子園に出場。チームは大会2連覇を果たした。
どちらも謙遜しているわけでも、卑下しているわけでもない。お互いを認め合い、切磋琢磨しながら成長してきた。プロ入り後の2010年に前田さんは投手にとって最高の栄誉である沢村賞を受賞。「それまでは“意識する選手”を聞かれても、将大の名前を挙げるのが恥ずかしかったんです。でも、沢村賞を受賞したことで、彼の名前を挙げることができるくらいまで、自分も頑張れていると思えるようになりました」。
■凄さに触れ、先人に感化され、高いレベルの場所を目指した
現在、前田さんが日米通算144勝で、田中さんが174勝。200勝を目標にしている前田さんは「先に将大が200勝するので、その後を追いかけられればいいのかなと思っています」と語る。
前田さんは最初、メジャーリーグに行くつもりは全く無かったという。その理由を「偏食だったから」と告白する。前田さんは「昔は自分の好きなものしか食べられなかったんです。中学のときに日本代表として海外で試合することもあったんですけど、食事がすごく大変で。その経験から、アメリカで野球するのは大変だなと感じていたので、自分が行くとは思ってもみなかったですね」と明かした。
しかし、ダルビッシュ有さんや田中さんら、同世代の活躍に心が揺れる。最初のきっかけは、2013年に出場したWBC。「メジャーにはこんな凄い選手がいるんだと肌で感じました。さらに、身近な選手だった将大やダルビッシュさんがアメリカで日本のような成績を残せなくて。あんなに強いピッチャーたちが打たれてしまうメジャーに僕が行ったらどうなるんだろうと、日々考えて過ごしていたんです。そうしたら、自然と“高いレベルでやってみたい”という気持ちになっていました」。
先を行く選手たちに感化され、道を選んできた。前田さんは「自分よりも上の選手が身近にいて、その中で努力することはとても大切だと思うんです。引っ張ってくれる存在がいると、周りも引っ張られる。僕自身が将大に、ピッチャーとして引っ張られているところはありますね」と打ち明ける。
一方で、田中さんも、普段はそこまで意識しないとしながらも、「改めてライバルのような存在って必要なのかもしれないですね。そういう相手がいるからこそ、“あいつよりも上回ってやろう!”という気持ちが生まれるんだと思います」と話す。
ボーイズリーグから高校野球、そして日本のプロ野球を経て、メジャーリーグへ。舞台を変えながら戦い続けてきた二人が相まみえる日を、ファンも待ち望んでいる。
次回、4月17日の放送は、前週に引き続き、メジャーリーガーの田中将大さんが登場する。