“高み”を目指すからこそ身につく「目標の見つけ方」と「努力のやり方」

2020.03.27 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。3月27日の放送は、元陸上競技選手・朝原宣治さん、マラソンランナー・千葉真子さん、元女子スピードスケート選手・大菅小百合さんのエピソードをプレーバック。3人の輝きの秘密に迫った。
■ステージが変わっても、年齢を重ねても「まだできる」と思い続けること
これまでに日本記録を3度更新し、2008年には北京オリンピックの男子4×100mリレーで銀メダルを獲得。陸上界にその名を刻む朝原さんが、短距離走の選手として頭角を現したのは大学生の頃だった。1993年の国体に男子100mの選手として出場し、日本記録となる10秒19をマーク。朝原さんは「自分自身が日本記録を出すなんて思っておらず、当然、周りの期待もありませんでした。ただ走るのが楽しい時期。純粋に走っていた感じですね」と振り返る。
まだ何者でもない大学生が起こしたミラクル。俄然注目を集めるようになった朝原さんは、1996年には10秒14、1997年には10秒08と、日本記録を更新していく。常人には及びもつかない100m10秒台の世界。朝原さんは「めちゃめちゃ気持ちいいですよ。前に誰もいなくて、後ろの選手ともどんどん差が開いていくんです」と笑顔で語った。
36歳まで現役を続け、2008年に引退。その後、解説者や指導者として陸上に携わってきた。そして47歳となった今も、常に「俺はまだできる」という言葉を胸に抱いている。「引退して、競技から離れたところでも頑張ってきたという自負はあります。体力は落ちているし、歳もとりましたけど、自分にはまだ残されたいろいろな力があると信じて前に進みたいですね」。朝原さんは、「50代、10秒台で走ることができたら、かっこいいと思っています」と目を輝かせていた。
■マラソンは、ひとりで走るものではない
長距離走のスペシャリストである千葉さんが力を注いでいるのは、マラソンランナーの“輪”を広げること。1997年のアテネ世界選手権の女子10000mと、2003年のパリ世界選手権の女子マラソンで銅メダルに輝いた千葉さんは、今から10年前に自身の主宰する「BEST SMILE ランニングクラブ」を立ち上げた。クラブには初心者から上級者まで、様々なレベルの市民ランナーが集う。
千葉さんは「現役のときは自分が輝くために走っていましたが、今は皆さんが輝くためのお手伝いをしたいと思っていたんです」と意気込む。丁寧な指導と細やかな気配りが評判で、生徒たちも「遅くても怒られないので、楽しく続けられます」「元気をくれて、刺激を与えてくれる良い先生です」と感謝を口にする。
クラブ名にも使われている「BEST SMILE(ベストスマイル)」は、千葉さんが最も大切にしている言葉だ。千葉さんは「マラソンって、ひとりきりで走っているようで、監督やコーチ、チームメイトみんなが一丸となって挑む競技なんですね。フルマラソンでは30km~35km地点が一番苦しいんですけど、そこでいつもみんなの顔が浮かぶんです」と現役時代を回顧し、「ゴールではみんなと笑顔で喜びあいたい。その思いがあったから、走り抜くことができたんじゃないかと思うんです」と続けた。“BEST SMILE”をすべての人へ。千葉さんは生徒に併走しながら、力いっぱいのエールを送り続ける。
■高みを目指さないと、身につけられないもの
元スピードスケート選手の大菅さんは、現役引退後の2014年に陸上選手の秋本真吾さんと結婚し、2017年に長女を出産。今年で3歳になる娘について、大菅さんは「何か夢中になれるものを持ってもらいたいですし、それに向かって一生懸命、努力できる子になってほしいですね」と語る。
2002年のソルトレークシティオリンピックと2006年のトリノオリンピックに出場し、さらにスピードスケートの練習のために始めた自転車競技でも、2004年のアテネオリンピックに出場。夏と冬で3度のオリンピックに参加した経験は、大菅さんの大切な宝物だ。「競技を辞めた今でも、目標の見つけ方や努力の仕方などは常に役に立っていますね。メダルは獲れなかったですけど、そこを目指すことができてよかったなと思っています。貴重な経験をさせてもらったし、間違いなく私の財産になっています」。
大菅さんは「もし、娘がやりたいことを見つけたら、応援したいし、やるなら世界を目指してほしいですね」と打ち明ける。娘が2歳の頃、初めてスケートリンクに連れて行った。大菅さんは「親バカかもしれないですけど」と前置きしつつ、「滑れはしないですけど、スケート靴を履いて氷の上に立つことはできたんです。普通は2歳だとできないんですね。これは、ちょっとスケートのセンスがあるのかなって(笑)、勝手に思っちゃいました」と声を弾ませた。
次回4月3日の放送は、現役メジャーリーガー、ツインズの前田健太さんが登場する。