Icon loading md
10172891 full 8980e4d0 e0e2 43ca 859c f8acda89bc35
目指せ、東京2020パラリンピック!パラリンピックアスリート兼研究者の想い
LIXIL
2020.03.06 10:00
8月25日に開幕する東京2020パラリンピック。多くのパラリンピックアスリートたちが、東京2020パラリンピックの出場権をかけてしのぎを削っていますが、そのうちの1人、パラバドミントン選手の長島 理(ながしま おさむ)選手にインタビューしました。約20年にわたり車いすバドミントンに打ち込み、 日本障がい者バドミントン連盟の強化指定選手として、国内外の大会で数多くのメダルを獲得している長島選手。一方、企業の研究者として特許技術を取得するなど、仕事でも華々しい功績を挙げています。そんな長島選手に、車いすバドミントンとの出合いから競技と仕事の両立、また東京2020パラリンピックにかける想いなどをうかがいました。アスリートや研究者としてのストイックな姿だけでなく、趣味に全力投球するユーモアあふれる一面もお届けします!
余儀なくされた車いす生活。強い意思の裏に隠された「自分自身との向き合い方」
10172891 yiizjigw full bc4d8590 35c7 4f50 8e34 4947d5ab91ba
中学・高校とバドミントン部に、大学ではバドミントンサークルに所属していた長島選手が、車いす生活を余儀なくされたのは大学2年生のときでした。

「今から20年ほど前、交通事故により脊髄を損傷しました。当時は、本人が知ると絶望するだろうという医師の判断からか、告知をされないまま2カ月間の入院生活。その間は『なんで良くならないのか』『この先どうなるんだろう』という不安に苛まれました。MRI画像で神経が切れているのを見て、当時の私の知識でも『これは脚が動かないな』とわかり、今後車いすでどう生活していくかを考えました」

1年間の休学を経て、大学に復学した長島選手。車いすでバドミントンを始めたきっかけは「友人とのつながりだった」と言います。

「かつて同学年だった友人はみんな進学してしまい、授業では会えなかったのですが、バドミントンサークルに行くと会えたんです。だから、『車いすでもサークルに行きたい!』という感じで顔を出し始め、初心者の人を相手に打ち合っていましたね。また、障がい者のバドミントンクラブにも参加して、競技用車いすやパラバドミントンの知識を徐々に習得していきました」

身体の使い方やラケットを振るタイミングなどが一般的なバドミントンとは大きく異なり、車いすバドミントンを体得するまでに3年もかかったそう。

「一般的なバドミントンは利き足を踏み出してから打つのですが、その感覚のまま車いすでやろうとすると、上半身のバランスが崩れてしまう。『もう少しでシャトルが取れるのに』と思いながら全然取れないので、初めのうちはすごくもどかしかったですね」
10172891 stedfpsq full 485dd914 99c2 472d b3aa 6f72bfd6cfa3
大学卒業後、就職してからもパラバドミントンを続けた長島選手。国内外の大会で実績を重ね、日本障がい者バドミントン連盟の強化指定選手となり、世界ランキング10位(※1)に。2019年は国内外の12大会に出場予定。海外遠征では、試合で全力が出せるよう体調のコントロールに細心の注意を払うと言います。

「海外遠征の際は、なるべくヨガマットを持参しています。長時間飛行機に乗り、車いすに座りっ放しだと脚がすごくむくんでしまうのですが、寝転がると少し改善されるんです。トランジットの際、空港の片隅にヨガマットを敷いて休むこともあります。また、脊髄損傷者は尿路感染による腎盂腎炎になりやすいので、衛生環境のよくない遠征先や疲れて免疫力が下がっているときは、常に不安と戦いながらケアしています」

ストレスやプレッシャーが多いなか、長島選手がメンタルを平常に保つために行っていることを聞くと、「ときには真剣に遊ぶこと」と意外な答えでした。

「先日、自ら企画してパラバドミントンの選手たちでカラオケ大会をやったんです。関東地区予選会と名づけ、自由曲と課題曲をそれぞれ歌って、優勝者には大きなトロフィーまで贈呈して(笑)。一見バカっぽいことを真剣にやって、全力でその時間を楽しむ。試合が続いて気が張っている時期こそ、こうした息抜きが必要かなと思います。周りが楽しんでくれたかどうかはわからないですが、私はとても楽しかったですね(笑)。実は超テレビっ子なので、休日は自宅でテレビやYouTubeを観るのも好きです。オンとオフのメリハリをつけて生活しています」

長島選手にとって、東京2020パラリンピックが開催される今年は特別な年。現在は車いすバドミントンのシングルス代表選手の内定を目指し、熾烈な戦いの真っ只中です。
10172891 oysviayd full 9d228bf9 61bf 47d9 99a4 ab8b68e50d2d
「東京2020パラリンピックの競技にバドミントンが決まってから、競技者のレベルが格段に上がったと日々実感しています。今後の国際試合で多くの好成績を挙げ、内定を目指したいと思っています」

また、アスリートの目線から、東京2020パラリンピックの楽しみ方についても語ってくれました。

「たとえば東京2020パラリンピックのバドミントンは、車いすが2クラス、立位は下肢障がいが2クラス、さらに上肢障がいと低身長のクラスにそれぞれ分かれているので、障がいの種類や重さによって、さまざまなプレーが見られるのが特徴です。障がいがあるなかで、どう工夫してポイントを取るかという“正解”は、選手によって違います。そうした違いを理解すると、東京2020パラリンピックをより楽しめますし、さまざまなことに対してインクルーシブな見方ができるようになると思います」
>世界に挑む長島選手の素顔もこちらでチェック!
東京2020パラリンピックを目指し、“アスリート社員”として邁進!
10172891 ooqobwmz full 0a407bfc b18e 47be b790 c9b4a33909fb
パラバドミントン選手だけでなく、研究者としての顔も持つ長島選手。大学卒業後の2005年、INAX(現:LIXIL)に入社しますが、就職活動は困難が多かったそうです。

「化学研究者を志望していたのですが、当時は車いす利用者だと伝えると、安全面や設備が整っていないという理由で、就職試験の前に何十社もの企業に断られてしまいました。そんななかINAXは『実力で評価します』ということで、他の社員と平等に一次面接から受けることができました。入社後は防汚技術といって、トイレや洗面化粧台などの水アカ汚れをつきにくくする技術についての研究を長年行いました」

トイレの水アカを付けにくくするコーティング技術で、特許も取得。コーティング技術の発明者として最優秀賞を受賞するなど、会社の第一線で活躍する長島選手に転機が訪れたのは、東京2020パラリンピックの競技にバドミントンの採用が決まったとき。「最初に知ったときは、喜びよりも『これから大変になるぞ』という想いが大きかった」と言います。

「それまではフルタイムで勤務し、バドミントンの練習は主に週末に行っていました。でも、東京2020パラリンピックへの出場を目指すとなると、仕事と練習のバランスが変えなければと思ったんです」

2015年に長島選手が勤めるLIXILは、東京2020オリンピック・パラリンピックのゴールドパートナー(住宅設備部材&水回り備品)に決定。長島選手は東京2020パラリンピックの出場を本格的に目指すために、2017年度から“アスリート社員”として14時まで業務を行い、15時からはバドミントンの練習やウェイトトレーニングを行う生活にシフトします。

「試合や合宿のために海外遠征が続くと、その月の出社日は数日ということもあるのですが、会社の方々は理解し、さらに応援もしてくださるので本当にありがたいです」

長年培ってきた研究者としての経験は、バドミントンをするうえでも大いに役立っているそう。
10172891 fbrzttrr full a494d219 eccb 42a4 921b 38e98a56668a
「研究は、とても地味な作業の繰り返しなんです。なかなか成果がでないのは当然というか、それくらいのスタンスでいないと続けていくのが難しい仕事なので、忍耐力はついたと思います。少しずつ条件を変えて実験を行い、試行を繰り返すのが私の研究スタイルなんですけど、こうした研究のプロセスをトレーニングにいかすこともあります」

昨年1月からは、人の特性を科学的に解明し、新たな生活者価値を創造・提供する同社内の「人間情報科学研究所」に勤務。仕事と競技の両立は大変そうに見えますが、メリットも大きいと言います。

「バドミントンに関する悩みを職場の方に話して、客観的な意見をもらったり。一方、仕事がなかなかうまくいかないとき、バドミントンの練習がストレス解消になって、仕事に前向きに取り組めることもあります」

年齢や国籍、障がいの有無などに関わらず、より多くの人が利用できることを目指す「ユニバーサルデザイン」を実現してきたLIXIL。長島選手は車いす利用者の社員として、ユーザー目線で長年商品開発にも関わってきたそう。

「商品開発の部署の方から『車いす対応のトイレの評価をお願いします』と頼まれ、たくさん携わってきましたが、長年の積み重ねが商品にいかされていると感じます。私も広い意味でユニバーサルデザインの実現に貢献できたのかなと。外出先のトイレでメーカー名をチェックする習慣がついているのですが、自社製品が使われていると嬉しいですね(笑)」

最後に、パラリンピックアスリートとして目指す選手像について語っていただきました。

「3年ほど前から小中学校を訪れ、体育館で車いすバドミントンを披露しています。プレーを見て『すごい!』と言ってくれる子どもたちの姿を見ると、続けていてよかったなと思いますね。障がい者か健常者かにかかわらず、より多くの子どもたちに感銘を与えられるような選手を目指し、これからもがんばりたいと思います」
東京2020パラリンピックの出場権がかかった大事な時期にも関わらず、パラバドミントンの魅力や仕事と競技の両立について気さくに語ってくださった長島選手。アスリートの生活や考え方に触れると、東京2020パラリンピックの応援にもより一層熱が入りますね。さまざまな競技やアスリートをチェックして、東京2020パラリンピックを楽しみましょう!
※1: WH1クラス、シングルス/2019年12月10日現在
10172891 kuyykkoh full f9ddd9c9 e245 4442 861b e7bec2f62f66
長島 理 選手
1979年生まれ。株式会社LIXIL Technology Research本部 人間情報科学研究所勤務。中学からバドミントンを始める。大学時代に事故で脊髄を損傷し車いす生活となったが、車いすバドミントンを知り競技を再開。日本障がい者バドミントン連盟の強化指定選手として、国内外の大会で数多くのメダルを獲得している。2005年、INAX(現:LIXIL)に入社し、防汚技術などの研究に従事。トイレや洗面化粧台などの水アカ汚れをつきにくくする技術についての特許を取得し、製品化されるなど業務でも大きな実績を残している。
Advertisement