全員がやるべきことを理解したとき、ぶつかり合っても壊れないチームになる

2020.02.28 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。2月28日の放送は、元なでしこJAPAN・永里亜紗乃さん、プロ野球の千葉ロッテマリーンズ監督・井口資仁さん、元体操選手・岡部紗季子さんのエピソードをプレーバック。3人の輝きの秘密に迫った。
■全員がやるべきことを理解しているからこそ可能なこと
2015年の女子サッカーワールドカップに、なでしこJAPANの一員として出場した永里さんは、姉の優季さんと共に激戦を勝ち抜き、準優勝に貢献。当時のなでしこJAPANの強さについて、永里さんは「個人の熱量がすごかった」と表現する。チームを良くするためにメンバー同士が激しくぶつかり合う姿を間近で見てきた永里さんは、「本気っていうのはこういうことなんだと感じました。ピッチの中でも、納得のいかないことがあるとみんな遠慮なく言い合うんです。本気だからこそ、あそこまで熱くなれると思うんです」と振り返る。
2011年の女子サッカーワールドカップで初優勝という歴史的快挙を成し遂げたなでしこJAPANだが、その後もおごることなく研鑽を重ねてきた。永里さんは「自分のプレーを良くするためには、連携が必要だし、そのためには味方に強く言わなければいけないこともある。でもそれって、自分がやるべきことをしっかり理解している証拠でもあります。なでしこJAPANが、一人一人が考えて行動できる“大人の集団”だというのは肌で感じました」と打ち明けた。
一方で、どれだけ言い争っていてもピッチの外に出た後はみんな笑顔になるという。それは全員が明確な目標を持ち、一丸となって突き進んでいるからこそ。永里さんは「些細なことでもいいんです。その日の目標を決めて、やり遂げることが明日につながる。それをできる人が強くなれるんだと思います」と言葉に力を込めた。
■感情に左右されないマネージメント
千葉ロッテマリーンズを率いる井口さんの使命は、チームを強くすること。そのための第一歩として、監督に就任してからは“喜怒哀楽”を封印した。自軍の選手たちはもちろん、相手チームから溢れ出る“感情”に引っ張られないよう、厳しく己を律しているという。井口さんは「たぶん時代でしょうね」とつぶやいた。「僕が選手のときは、感情を出す監督が多かったですし、そのほうがわかりやすかったんですけど、今は感情を出すと萎縮しちゃう選手もいるんです。そうなると結局、相手じゃなく、我々、首脳陣の顔を見てプレーしてしまう」。チームを強くするということは、選手を強くすること。そのためには一人一人に合った指導を心がけている。
同時に、選手同士を競わせることも忘れない。井口さんは「チーム内で競争をさせないと絶対に強くなれないんです。今、千葉ロッテマリーンズは選手層が厚くなってきていて、それぞれの選手がレギュラーを争う状況になりつつある。これから強くなっていくと思いますよ」と自信をのぞかせる。
チームが勝ち、ファンに喜んでもらいたい。願いはとてもシンプルだ。井口さんは「結局、それだけなんですよね。世の中の人を幸せにしたいだけ。みんなの喜んでいる姿を見るのが僕らの活力にもなるんです」と笑顔を浮かべた。
■厳しい指導でも、そこに愛があり、相手がそれを優しさと理解していれば
岡部さんは、体操選手として2005年の全日本ジュニア選手権で個人総合優勝を果たし、一時はオリンピック代表候補として注目されたが、22歳で引退。一線を退いた後は、幼年層を中心とした後進の育成に務めている。人に何かを教えるということは、経験を共有するということ。岡部さんは「子どもにとっては逆上がりが最初の壁なんですけど、一緒に何度も練習して成功したときは、私も達成感を得ることができますし、こういう仕事ができてすごく幸せだと感じます」と明かす。
相手と密にコミュニケーションを取っていく指導スタイルは、引退後に留学したカナダで学んだこと。「向こうは指導する先生も強いんですけど、選手も強くて、お互いがぶつかり合いながら、戦いながら上手くなっていくんです。日本とはだいぶ指導スタイルが違うな、と思いました」。
さらに岡部さんは「どんなに厳しい指導でも、愛があって、選手もそれが優しさだということを理解していれば、良い関係が築けると思うんです」と自身の考えを語った。現在、障害物が設置されたコースで、ダイナミックなパフォーマンスを競うパルクールに挑戦中。岡部さんは「体操もパルクールも自分の中で完結するのではなく、経験したことをどんどん人に伝えていきたいんです」と声を弾ませた。
次回3月6日の放送は、元陸上選手の朝原宣治さんが登場する。